ウィキペディアにはこうあります。
バイラル・マーケティング(Viral marketing)とは、口コミを利用し、低コストで顧客の獲得を図るマーケティング手法である。情報の広まり方がウイルスの感染に似ることから、「ウイルス性の」という意味の「バイラル」の名を冠している。(Wikipediaより抜粋2015年4月現在)
現状のバイラルメディアの多くは、特定のテーマに沿ったコンテンツを収集・配信する「キュレーション・メディア」の形をとっています。いわゆる「まとめサイト」ですね。口コミしやすいコンテンツを並べ、目立つところにフェイスブックやツイッターなどのソーシャルボタンを配して閲覧者に拡散を促します。アメリカで爆発的な人気を集めている「BuzzFeed」というサイトは、2006年のスタート当初、「笑える動画」(動物ネタなど)を中心に配信していましたが、最近では政治やニュースの記事にも注力するようになり社会的にも大きな影響力を持つ媒体に育ちました。現在は月間で1億以上ものページビューがあるそうです。
そして、この「BuzzFeed」の収益源のほとんどを稼ぎ出しているのが、サイト内に掲載されている「ネイティブ広告」です。ネイティブ(native)とは「自然に」という意味で、メディア本来のコンテンツと広告を、自然に溶け込ませるように表示する手法です。一見して広告とわかるバナー形式と違い、広告をあえて一般の記事やコンテンツと同じフォーマットで表示するのです。よく、ポータルサイトの記事の周りに「おすすめ情報」とか「関連記事」と記されたものがありますよね。他にも、グルメサイトの検索結果に実際の「ユーザー評価」とは別の「お店情報」が表れたり…それもネイティブ広告の一種です。いかにも「売りつけ」ようとする露骨なディスプレイ型の広告より、メディアに寄り添った感じで伝わるぶん、抵抗なく受け付けてもらえるだろう…というわけです。
口コミさせることが前提の「バイラルコンテンツ」の中に、まぎれ込むように「ネイティブ広告」が潜んでいる…と言うと何だか姑息な手段のようですが、そこは、記事と広告が混同されないように、小さく「広告」とか「PR」の文字が入っていて区別できるようになっています。宣伝であることを隠そうとするステルスマーケティングとは違います。
また、ネイティブ広告って「記事広告」のことでしょ?と勘違いしている人がいますが、イコールではありません。
「記事広告」は、その名の通り新聞や雑誌の記事体(サイトも含む)を模した体裁で作られた広告のみを指します。これに対し、ネイティブ広告は、掲載メディアの通常の記事と同じデザインや機能で表示されている事が要件の一つ(IAB・インターネットアーキテクチャ委員会で定めた6つの分類と6つの評価軸がある)となっているため、ニュースを扱うメディアに載る場合には、結果的に「記事広告」になることもある、ということです。ですから、要件さえ満たしていれば「おもしろ動画」も「クイズ」や「ゲーム」もすべてネイティブ広告に含まれます。体裁もさまざまで、写真+テキスト、動画のみ、テキスト1行だけの型だってあります。そうそう、あのヤフーやグーグルの「リスティング」だってネイティブ広告に含まれるのですから。
このように、コンテンツマーケティング自体がまだ成熟途上である上、「定義」があっても、運用する側の認識や解釈が追いついていないケースもあります。僕たちももうしばらく勉強を続ける必要がありそうですが、WEB広告界としてはそんな悠長な構えではいられないでしょう。そもそもコンテンツマーケティングは、バナー広告などが効かなくなって広告料金が降下してきたことの「対策」という側面があります。同時に、ますます比重の大きくなる「スマートフォン」は画面が小さいために、これ以上広告を設定するスペースがないといった事情もあります。
そんな中、情報(コンテンツ)を、自然(ネイティブ)に、口コミ(バイラル)で拡散できるというこの手法は、業界にとって、バナーとリスティングの次にやっと探り当てた期待の「鉱脈」です。さっそくずんずんと掘り進めたいところですが…心配もあります。それは、掘れば掘るほど広告と記事のボーダーラインがどんどん見えづらくなっていくことなのです。——すまん○△君、メールは次回のコラムを読んでからにしておくれ。
(続く)
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