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ステージからMVまで演出する「演出振付家」
菅野:MIKIKOさんをPerfumeの振付師として知っている方は多いと思いますが、「演出振付家」としてステージやMVなどの総合演出をされていることは知らない方も多いと思います。はじめに、演出振付家とはどんな仕事ですか。
MIKIKO (以下 M):ライブや舞台の中で、振付だけでなく、全体を見ながら総合的な演出を手掛けています。
菅野:きっかけは、2005年に広島で行ったご自身の初舞台「DRESS CODE」だそうですね。
M:私は広島出身で、この頃はまだ広島を拠点に振付の仕事をしていました。演出家としてやっていきたいと思い、地元でメンバーを集め会場を借りて初めて舞台を作ったのが「DRESS CODE」です。アミューズ会長の大里(洋吉)会長が見に来てくださっていて、東京で本格的に演出をやった方がいいと背中を押していただきました。東京に拠点を移し、その後、世界に通じる技術を勉強するためNYに留学しました。そこでセリフも歌も一切なく、ノンバーバルな身体の動きだけで、ストーリーを伝えていくパフォーマンス「フエルサブルータ」に出会い、こういうものを自分はやりたかったんだ!と感じたんです。
菅野:それが演出振付家としての方向性が決まったタイミングだったんですね。Perfumeの3人との出会いはいつだったんですか。
M:彼女たちが広島のアクターズスクールの第一期生として入学してきた時です。私が先生だったんです。
菅野:なるほど。それで「MIKIKO先生」なんですね。
M:Perfumeがブレイクしたのが2007年の「チョコレイト・ディスコ」です。その頃はまだNYから振付だけ提供していたんですが、ワンマンのライブができるようになったタイミングで、MVやライブも含めた演出統括として呼ばれ、東京に戻ってきました。
菅野:「不自然なガール」は、NY帰国後に総合演出を任されるようになって、全体の演出を手がけた初期の代表作ですね。
M:「不自然なガール」というタイトルだったので、Perfumeにしては珍しく、3人以外の人も出てくるようにしました。この頃から衣装、CDジャケット、監督を誰にするかなどを総合的に取りまとめています。
菅野:振付や演出、衣装などのアイデアはどういう手順で考えるんですか。
M:曲のタイトルや歌詞を基準に、Perfumeの3人と私でどういう方向性にしたいか話し合います。そこから監督を決めて、アイデアを出してもらい、それに合う衣装を決めていきます。
菅野:このMVは関和亮監督ですね。ちなみに、振付がメインの映像では、監督はどうコンテを切るんでしょうか?
M:関さんはコンテがなくて有名なんです。MV中に使用するパネルでアイデアを伝えてくれて、他は割と自由にやらせてもらっています。もっと踊りたいと言えばそうさせてくれますし、関さんから面白い視覚のアイデアをもらうこともあります。監督1人で作るというより、みんなで作っている感じです。
菅野:2009年の「⊿(直角二等辺三角形)ツアー」では、ライブの演出もされていますね。edge(⊿-mix)では事前に撮影した3人のダンス映像を舞台上のLEDが貼り付いたキューブに流して、それとリアルタイムのダンスを完全に同期させながらパフォーマンスするという、アナログな同期の最高峰のような演出でした。この場合はMIKIKOさんが絵コンテを書くんですか?
M:ビデオコンテを作って、そこに文字を載せていくんです。ここで誰がどう登場するかやここで照明を点けるといったような。
菅野:そういう指示ビデオを作るわけですね。真鍋さんは、このライブを見に行ったそうですね。
真鍋:Perfumeの舞台を見たのは、この時が初めてで、新しいことに、これだけのスケールでチャレンジしている人たちがいるのかと驚きました。結構危ないことにもチャレンジしていて。
菅野:このレーザー、ちょっとでも外すと…
M:衣装が焦げちゃいますね。でも、広い舞台上に3人しかいないので、映像や光の演出で3人が会場を支配して見えるように知恵を絞ってやっていましたね。