健康機能性食品をマーケティングしてみる——ヘルスケアビジネスは、いつもとなりにずっといる第3回

【前回のコラム】
ALSアイスバケツチャレンジをマーケティングしてみる ――ヘルスケアビジネスは、いつもとなりにずっといる第2回はこちら

「白衣」に興奮するのは、夜の歓楽街をさまようオヤジも、診察室で腕まくりする高血圧患者も同じ。「白衣性高血圧」という、れっきとした医学用語があるほどです。家で測っているときは別段異常もないのに、病院で白衣を着た人を前にすると、血圧が上がってしまうという現象。「白衣」という代物は、いたいけな僕らのココロを、こうも簡単にもてあそびます。
そんな「ホワイトコート(白衣)効果」を用いた“健康まがい商品”が、世の中にはゾロゾロしています。それらしい服を着た人が、もっともらしい話をする映像や写真が出てきたら、要注意の合図です。なんでわざわざ白衣着てるんだ? なんか怪しい!

お墨付きが欲しい!

『生活者ニーズから発想する 健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』
著:西根英一/発行:宣伝会議(2015/3/1発売)詳細はこちら

「この食品に含まれる成分は、健康の維持増進に役立ちます」。その根拠を示すために、これまで《お墨付き》商法というマーケティング手法が用いられてきました。○○医師推薦、○○協会推奨、○○マーク認証…等々。たとえ無名であっても、白衣をまとった医師が「私が開発に携わりました」と言えば、それなりに箔が付きます。でも、白衣というベールを剥いだら、その商品の存在価値が“グレー”だったり、存在自体が“ブラック”だったり。たとえば、その商品を使い続けても、謳われている健康効果を再現できないとか、実はあなたにはおススメできない商品でした、という具合に。
健康にいい!の元ネタのことを《エビデンス》と呼びます。つまり、エビデンスがしっかりしていないのに、根拠を捻じ曲げてしまうような“演出効果”として、《お墨付き》が用いられてきたきらいがあります。
いま、このエビデンスの《質》が問われようとしています。つまり、ホワイトコート効果のような“演出”なしに、もともとのエビデンスをちゃんと評価しようという風潮です。この春に始まるのが、最近よくニュースに出てくる「食品の機能性表示制度」です。これは、2015年4月1日から、消費者庁の監督のもとに始まる制度。エビデンスを示す複数の論文をもとに条件が整えば、それらの届け出によって、加工品だけでなく野菜・果物・魚介類といった生鮮品を含む商品に対しても健康機能性表示が可能になります。
この制度の大事なところは、「演出効果を求めず、エビデンスを認める」世の中づくりを推進していくところにあります。企業のマーケティング担当者の、「お墨付きが欲しい!」を正しい方向に導いていくことになります。健康まがい商品を積極的に一斉に排除しようとする動きの第一歩です。

次ページ 「エビデンスの《質》をマーケティングする時代に!」へ続く

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ヘルスケアマーケティング実践講座事務局
ヘルスケアマーケティング実践講座事務局


エーエムジェー 代表取締役 赤坂卓哉氏
企業の通販広告・店販広告全般のコンサルティングを行う。TV・ラジオにて累計2000回以上の通販番組を担当。通販において豊富な知識と実績を有する。通販や店販に欠かせない「薬事法」や「景品表示法」に深く精通し、法律を守りながら広告として成立つ「シズル感のある広告表現」を得意としている。企業の法務チェックも手掛けている。


日経BP
ヒット総合研究所 上席研究員 西沢邦浩氏(にしざわ・くにひろ)
小学館を経て、1991年日経BP社入社。開発部次長として、『日経エンタテインメント!』の創刊などに携わる。98年『日経ヘルス』創刊時に副編集長に着任。2005年より編集長。08年『日経ヘルス プルミエ』編集長。14年から早稲田大学大学院先進理工学研究科非常勤講師。「大人のラヂオ」(ラジオ日経)ほか、TV、ラジオ、セミナー講師等多数。


マッキャンヘルスコミュニケーションズ
CKO(最高知識責任者)
西根英一氏(にしね・えいいち)
健康・医療・美容のマーケティング戦略とコミュニケーション設計を専門とする。マッキャンヘルスコミュニケーションズCKO(最高知識責任者)、千葉商科大学サービス創造学部非常勤講師(「健康サービス論」「調査法」ほか)。日本広告学会、日本臨床腫瘍学会の正会員、日本メディカルライター協会、日本医学ジャーナリスト協会の協会員。厚生労働省「すこやか生活習慣国民運動」(健康日本21)の推進室室長等を歴任。3月に、宣伝会議から『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス『マーケティングの基本』』が刊行の予定。

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エーエムジェー 代表取締役 赤坂卓哉氏
企業の通販広告・店販広告全般のコンサルティングを行う。TV・ラジオにて累計2000回以上の通販番組を担当。通販において豊富な知識と実績を有する。通販や店販に欠かせない「薬事法」や「景品表示法」に深く精通し、法律を守りながら広告として成立つ「シズル感のある広告表現」を得意としている。企業の法務チェックも手掛けている。


日経BP
ヒット総合研究所 上席研究員 西沢邦浩氏(にしざわ・くにひろ)
小学館を経て、1991年日経BP社入社。開発部次長として、『日経エンタテインメント!』の創刊などに携わる。98年『日経ヘルス』創刊時に副編集長に着任。2005年より編集長。08年『日経ヘルス プルミエ』編集長。14年から早稲田大学大学院先進理工学研究科非常勤講師。「大人のラヂオ」(ラジオ日経)ほか、TV、ラジオ、セミナー講師等多数。


マッキャンヘルスコミュニケーションズ
CKO(最高知識責任者)
西根英一氏(にしね・えいいち)
健康・医療・美容のマーケティング戦略とコミュニケーション設計を専門とする。マッキャンヘルスコミュニケーションズCKO(最高知識責任者)、千葉商科大学サービス創造学部非常勤講師(「健康サービス論」「調査法」ほか)。日本広告学会、日本臨床腫瘍学会の正会員、日本メディカルライター協会、日本医学ジャーナリスト協会の協会員。厚生労働省「すこやか生活習慣国民運動」(健康日本21)の推進室室長等を歴任。3月に、宣伝会議から『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス『マーケティングの基本』』が刊行の予定。

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