どんな商品にもある「真実の瞬間」を見つけよう


【前回のコラム】「もし自分が退陣し、新しいCMOが来たらどんな判断をしますか?」はこちら

「瞬間」を捉えることがビジネスチャンス

画像提供 Shutterstock

瞬間を捉えることの困難さは、「ゼノンのパラドックス」のようにギリシア時代からの難問です。特に現代のマーケティングにおいては、この「瞬間」を捉えることが新たなビジネスチャンスとして注目されています。

そのことを考えるうえで「真実の瞬間」という言葉が参考になります。もともとはスカンジナビア航空の搭乗員が接客している15秒間を指した言葉でしたが、いまや店頭で商品を買い物カゴへ入れる瞬間(いわゆるファーストモーメントオブトゥルース)から、ネットで商品検索をする瞬間(いわゆるゼロモーメントオブトゥルース)まで、さまざまな意味を持つようになりました。

この「真実の瞬間」がマーケティングで重視される理由は、人が商品やサービスを買ったり使ったりすること自体を、もっと大きな文脈(マクロな視点)で捉える「カスタマージャーニー」が重要だという気づきがあったためです。また同時に、広告への接触や購買の瞬間など、それぞれのステージでの「体験」がブランド価値に影響を与える、というミクロな視点での洞察もあります。

どんな商品やサービスも固有の「真実の瞬間」を持っています。

それは、ブランド論でよく語られる「知覚品質」が、もっとも高くなるダイナミックな瞬間とも言えます。例えば、商品が店頭に並び、検討のうえ購買され、実際に使われる場面などがあるのでしょう。ちなみにシューズの場合は、何と言っても最初に試し履きした際の足入れの瞬間がひとつの「真実の瞬間」です。

これらは、アカウントプランニングにおける「インサイト」の多くの部分を占めます。さらに、ニューロマーケティング的な手法で検証すれば、脳が反応している瞬間を客観的に捉えることができるでしょう。

次ページ 「デジタルマーケティングにおける「瞬間」」へ続く

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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