ボツ稿と、何か他のことをやろう、の間

ぼくがこの企画でやりたかったことは、
「エッセイ形式ではなく、ラノベのようなストーリー形式で、主人公の成長物語とともに、みんなが共感できるテーマを最終的に提示する」ということ。

いわば「もしドラ」のようなことをやってみたかったのだ。

ところが、書いてみたら、いくら書いてもテーマまで行き着かない。
キャラが勝手に動き出しちゃうのだ。
「コーヒーショップへ、よ・う・こ・そ」第一話で5,000文字書いたところで、
「おや、終わらないぞこの話」ということに気がついた。

ちなみに、アドタイの平均は2000文字近辺である。

ひとつのテーマに結びつけるには、おそらく50,000文字くらい必要になりそうなことになる。
しかもここで終えると中途半端に駄作だ。
面白くもなく、くだらなくもなく、小学生がはじめて小説書こうとした10ページ目みたいな状態である。恥ずかしすぎて吉田栄作ばりに「うぉおおおおおーーー!」と、崖に向かって叫びたくなる 。

ここからが驚天動地の展開になるのに!!

ぼくは頭を抱えた。

やはり4,000字では、無理なのか。
そういえば、「もっとも短い泣ける小説」こと「鉄道員(ぽっぽや)」ですら40ページ、25,000文字ほどはある。

 
ちなみに、設定はこう。


 
りーこ(主人公)
バリスタを志すも何をやっても何もできないドジっ子。実家はコーヒー屋。実は魔女の一族の末裔(母は死亡)コーヒーは超まずいが、魔法の薬の調合は天才的。凛くんを助けるため、つい媚薬を調合してしまう。

凛くん(ヒーロー)
りーこの家の向かいにできた、話題のカフェのバリスタ。
ツンデレでストイック。媚薬入りコーヒーを誤飲して、亜美ちゃんのことを好きになってしまう。

亜美ちゃん(ライバル)
凛くんと同じ店で働く。凛くんのことが好き。
ライバルだけど、いい女。ロン毛。性格もいい。

ゲンゾウさん
近所に住む浪人生。浪人生のくせに好きな女性がいて「告白するためのコーヒー」を凛くんに頼む


今後のストーリーはこうだ。

ゲンゾウさんが、コーヒー好きな彼女のために「告白にうってつけのコーヒー」を頼む
→凛くんトライ、失敗したうえケガをして、窮地に立たされる
→凛くんを守るために、りーこ、禁じ手にしていた媚薬を調合
→媚薬のおかげで、ゲンゾウさん告白に成功する。同時に凛くんが誤飲、亜美ちゃんを好きになってしまう
→りーこ嫉妬「この気持はなに?」
→亜美ちゃん微妙
→・・・→・・・→・・・→・・・
→そんなこんなで最終的に、テーマ「夢は信じ続ければきっと叶う。広告クリエイティブも同じ」ということが、りーこの成長物語とともに感動的に語られます。たぶん。


と、全プロットを、アドバタイムズ編集・刀田さんに話したところ、
刀田さんは完全に沈黙した。
「この話、どこまで行ってもアドタイと関係ないかも……」
ということに、どうやら気づいたようだ。

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中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

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