資源が少ないからこそ戦略が豊かに
「選択と集中」という言葉は、資源の活用という観点では意味がありますが、戦略を示すには不十分です。そこに、時間軸をふまえなければ、せっかく集中しても無駄になることもありますし、選択して破棄したものでも後から急に成長するものもあり得ます。逆に言えば、時間も戦略的な資源であると言えます。これを有効に使えばこそ、異なる競争軸を生み出すことができるのです。
逆説的ですが、ルメルト氏のいう「有限な資源のときのみに必要である」戦略の要諦とは、資源が潤沢であるよりも、有限であることを常に意識した方が戦略性も高まるとも言えます。これは個人でも直感的に理解できるでしょう。お金や時間などの資源は、あると思っているよりも、ないと思っている方が有効に使えるはずです。
ほかに有効な資源には何があるでしょうか。空間という観点では、オフラインのみならず、デジタルも重要な資源です。移動距離や場所ももちろんですが、細かいところではデバイスのスクリーンサイズなど物理的スペースもそうです。
そして、最後に忘れてはならないのは、「人」という資源です。人的資源というのは局所的に集中する傾向があります。なぜなら人的資源は、近い場所で交流したほうがより高い付加価値を生み出すからです。サンフランシスコのシリコンバレーがそのような場所になったのも偶然ではありません。そして以前の組織について触れたコラムで述べた通り、交流は大きなグループで始まるのではなく、少人数つまり有限な資源であるからこそ意味があります。そこには時間と同様に、差を作り出すことが可能な元=資源なのです。
もしあなたが新しい「有限な資源X」を発掘し、活用することができれば、今後まったく新しい差別化された競争戦略が生まれるもしれません。