ネイティブアドはテレビCMに代わる新たな認知獲得の手段になるか

【前回コラム】「ユーザー目線で考えよう、ここが変だよ「ネット広告業界」」はこちら

広告がなぜネイティブに向かうのか

画像提供 Shutterstock

前回のコラムでは、2006年頃に流行ったステマペイパーポストという、一見ブログの記事に見える記事広告の手法についてご紹介しましたが、最近同じような視点で議論に上がりやすいのが「ネイティブアド」という言葉でしょう。この「ネイティブアド」という言葉は、業界関係者でも誤解しているケースが多く、非常に議論が起こりやすい言葉と言えます。

「ネイティブアドはテレビCMに代わる新たな認知獲得の手段になる」と言ったら皆さんはどういう印象を持たれるでしょうか?この言葉は米国のネイティブアドネットワーク企業であるシェアスルーのダン・グリーンベルグCEOが来日した際に交流会で私が直接聞いた言葉です。

何を荒唐無稽な、と思う方もいるかもしれませんが、ダン・グリーンベルグ氏は、米国のインターネット広告協議会であるIABのネイティブアド委員会でプレイブックをまとめた人物の一人でもあり、ネイティブアドの本家である米国の大家と言ってもいい方です。グリーンベルグ氏に聞いた話から私が理解した内容をここで解説してみましょう。

ネイティブアドという概念は、元々の意味を文字通り捉えると、広告枠がネイティブかどうかという分類であり、今までの「ネイティブではない広告」と「ネイティブアド」を区分している言葉と言えます。

従来のマスメディアにおいては、一般的に編集と広告が分離していることが常識でした。テレビにおいては番組とテレビCMは明確に分かれ、新聞や雑誌も編集記事面と広告面は明確に分離がされています。この考え方の元にネット上で確立された広告手法が、バナー広告でした。

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では、一度視点を引いて、この広告手法についてユーザー視点で見てみましょう。

これらの広告手法はユーザー視点で見るとネイティブではなくノイズになっているのではないか?と考えてみてください。ほとんどの場合、バナー広告はユーザーがインターネットで探している情報と全く異なる文脈の情報を表示します。これはテレビCMや新聞広告がテレビ番組や新聞記事と全く異なる情報を広告として表示するのと同じです。

ただ、テレビや新聞のようなマスメディアにおいては、ある程度強制的に視聴者や読者に広告を見せることができているが、ネットにおけるバナー広告はそのような強制力がありません。何しろほとんどの広告はPCの画面の4分の1以下のスペースにしか表示されないわけで、新聞や雑誌広告の全面広告のようなものとは全く違います。

その結果、ほとんどのバナー広告はユーザーによって無視されるようになってしまっている現実があるわけです。

つまり、ユーザーはコンテンツを見るためにネットやWebサービスを使っているのであり、そこに無理矢理何の脈絡もないバナーを表示しているバナー広告はユーザーの邪魔をしているだけではないか、ネイティブではないじゃないか、という問題意識から「ネイティブアド」という言葉が出てきていると考えれば実は簡単です。

つまり、ネットやウェブサービスにおいては、広告もコンテンツ同様の「ネイティブ」になる必要がある、というのがネイティブアドの背景にあるとまず考えるべきだと思います。

そこで、再度交流会でシェアスルーのダン・グリーンベルグ氏に聞いた話を意訳させて頂くと、

「現在のリターゲティングなどのアドテクノロジーは、所詮ノイズとなっているバナー広告枠の最適化を行っているだけ。ネイティブアドは、テレビCMのように強制的に広告を見せることで認知を獲得している手法を置き換える新しい広告のトレンドである」
 
という話になってくるわけです。

次回は、このネイティブアドのトレンドについて、もう少し具体的な例を合わせてご紹介したいと思います。


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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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