コンテンツをつくる企業文化が大事
境:谷口さんが出てきたなかで、第2の谷口をつくろうという動きがLINEで起きたりはないですか。
谷口:なくはないですけど、やっぱりコンテンツをつくるのは少数派で、まずはプラットフォームがまだまだ油断できない状況ですから。Webの人がコンテンツをつくる流れはまだ始まったばかりです。
境:いまは、つくり方そのものからつくっている?
谷口:そうですね。最近はストーリーづくりを勉強しています。Webだと面白ければ延々と読んでくれるので、ハリウッド方式とか調べています。
土屋:たぶん、そうなってくる時代。今はネット上の動画コンテンツもテレビのものが、違法も含めあふれている。ただ、今度アメリカからNetflixやアマゾンのような映像をつくるネット企業のモデルがやってくると、どうクリエイティブを内製できるかということが大事になる。自社のプロデューサーがクリエイティブをしっかりコントロールできるということが、これからの時代に重視されてくると思います。
谷口:その通りで、ネットで動画の広告枠が増えているけど、結局流れているのはテレビCMそのままだったりしますから。中身はこれからですね。
境:Netflixがやって来ることも含めて、コンテンツをつくる企業文化というのが、ネットで始まると?
土屋:オウンドメディアということが言われ始めて、企業自身がものを作ろうとしているわけじゃないですか。制作者としてはクライアントと直接つくることができるわけだし、それが世界に向かって開かれていく。そこで、まだ商品が何秒映ったと言っているようじゃ…ということですよね。オウンドメディアで自社の商品と同じように100種類のコンテンツをつくっていく、そういう時代ですよね。
境:やっぱりパトロンが大事ということですね。
土屋:そう、それを総合的に考える時代。パトロンがオウンドメディアのなかで何をどう伝えていくのか。そこに現在のテレビの番組も交えて、どうリーチを稼ぐのか、トータルで戦略を組みたてる。その中心にあるのは、「何をつくっているのか」ということ。直接、間接にお金を出す人たちの姿勢がこれからの流れを決める、そういう時代になると思います。
谷口:トータルって大事だと思います。制作者がテレビ、雑誌、Webに分断していますが、Webのプラットフォーム上でコンテンツをつくるのにWebの知識はいらないですから。最近、私はテレビの人たちに教えてもらいながら仕事をしています。
境:土屋さんと谷口さんで何か一緒に作ってはどうですか?
谷口:社長のLIFE VIDEOをつくってもらいたいですね!日経の「私の履歴書」のようなものも、スマホ向けの表現でつくれれば面白いでしょうね。
どうでしょう?作り手のみならず、すべての業界関係者にとって、興味深い対談になったと思います。ということで、この対談で、本連載「ビデオコミュニケーションの21世紀」は一端終了です。テレビとネットの交錯を追いかけながら、私が一貫して訴えたかったのは、今後、映像業界の重心はネットに移行していくであろうこと。あるいはネットで映像が重要度を増していくことです。そして、だからこそコンテンツの重要度は高まるはず。そこでは予算感覚の変更も必要です。テレビほどお金をかけられない、その一方で、コンテンツにお金をかけないネット文化も変化が求められるはずです。
テレビとネットが、お互い少しずつ変わっていきながら、融合できるかがこれから本格的に問われるでしょう。そういう時代を駆け抜ける軽やかさと思慮深さを、私たちも身につけていきましょう!
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