シリーズCMにする理由とは?
中村:一般視聴者の感覚としては、「なぜシリーズCMにするのか?」という疑問もあるようです。シリーズにしていくとブランド化するというか、「みんな犬のお父さんだから覚えている」という状態にするために長くやっていきましょう、みたいな提案をするものなんですか?
澤本:提案というか結果として、犬のお父さんが出た瞬間にソフトバンクだってわかるから、印象が早いんだよね。普通、CMを最初に見たときって「何のCMだろ?」って思うじゃない。でも、あの音楽が鳴って、犬がしゃべってたら、「あ、ソフトバンクだ」と思ってくれる。それは印象を高めていかないと到達しないところ。ポーンと流しただけでそこにいっちゃうというのは財産を貯めてきて、やっとできることだと思うので。
権八:そうですね。
澤本:新鮮味がなくなってくる部分はあるじゃない。でも、逆に印象に残っているから今できることもある。それはバランスを取るのが難しいよね。ほっといたらずっと同じようなことになっちゃうから。何かしら新しい血を入れたりしないといけないし、新しすぎてもまた、というのがあるからね。
権八:笑点やサザエさんは今でも視聴率が凄い。マンネリといえばマンネリな部分があっても強いし、親しみがある。ヒルナンデス!ってお昼の番組がうまくいってるじゃないですか。記憶はおぼろげですけど、(元)日テレの村上さんという番組プロデューサーが「面白すぎてはいけない」と。「過激に面白いことをやりすぎると飽きも早く来ちゃう」みたいなことを言っていて。
中村:えーっ。
権八:面白すぎないように調節をしながら緩く、緩くつくるみたいな。
澤本:その気持ちはちょっとわかる。サザエさんになろうとすると、サザエさんって毎回劇的に面白いことはない。サザエさんを見て「今週のサザエさん最高!」みたいのはない。前も見たことあるかもしれないけど、安定して面白いなという。
権八:佐々木宏さん(シンガタ)もそういうことを言ってますよね。刺激を与えすぎてはいけないと。宇宙人ジョーンズもずっと続いているし、犬のお父さんもずっと続いている。あれも長いですよね、「そうだ 京都、行こう。」も。20年ぐらいやってますよね。
澤本:同じようなことをやっているように見えるけど、見るとやっぱりいいなって思うね。
権八:コピーが毎回、ちょっとクスッとしたり、今のご時世そうだよなって思わせる鋭い視点があったり。太田恵美先生の素晴らしいコピーワークが。
中村:新しくするものと、ずっと大事にしていくものが。
権八:そのバランスが澤本さんとかは絶妙で、犬のお父さんをずっとやりながらブレイクした堺雅人さんを投入するとか、最近だと広瀬すずちゃんがじつはお母さんの若い頃だったとか。「強引だな、コノヤローっ」て思うけど(笑)。
一同:笑
澤本:整合性ないね。
権八:その強引さがソフトバンクシリーズのいいところ。面白い、めっちゃ強引で。