これらの従来型の広告が「ネイティブではない広告」だとします。
この分類がピンと来ない方のために、一度視点を引いて、この広告手法についてユーザー視点で見てみましょう。
従来のバナー広告などの広告手法は、ユーザー視点で見るとネイティブではなくノイズになっているのではないか?というのが「ネイティブアド」という言葉が示している根本的な問題提起です。
ほとんどの場合、バナー広告はユーザーがインターネットで探している情報と全く異なる文脈の情報を表示します。これはテレビCMや新聞広告がテレビ番組や新聞記事と全く異なる情報を広告として表示するのと同じです。
つまりバナー広告やテレビCMが表示する情報は、ユーザーが見ようとしている情報と異なるノイズ的なものになってしまう可能性が本質的に高く、ノイズになりがちな性質があります。要するに極端に分類するのであれば「ネイティブではない広告」だと言うことです。
ただ、テレビや新聞のようなマスメディアにおいては、仮に広告枠が「ネイティブではない広告」でノイズと受け止められることが多かったとしても、視聴者や読者の目線を確保することができる形態でとなっており、ある程度強制的に視聴者や読者に広告を見せることができます。
テレビCMであれば番組の間に自動的に動画が再生されますし、新聞や雑誌広告もページをめくれば1面広告になっているページという形で読者の目線を確保することができます。
ところが、ネットにおけるバナー広告はそのような強制力がありません。
何しろほとんどの広告はPCの画面の4分の1以下のスペースにしか表示されないわけで、新聞や雑誌広告の全面広告のようなものとは全く違います。新聞の花形である一面広告が15段広告だとするとネットのバナー広告は大きいものでも2段広告程度の割合しかユーザーの目線を確保できないサイズ。
その結果、ほとんどのバナー広告はユーザーによって無視されるようになってしまっている、という現実があるわけです。
つまり、ユーザーはコンテンツを見るためにネットやWebサービスを使っているのであり、そこに無理矢理何の脈絡もないバナーを表示しているバナー広告はユーザーの邪魔をしているだけで無視されているのではないか。ユーザーに見てもらうためには、ネット広告はもっとネイティブにならなければならないといけないのではないか、という問題意識から「ネイティブアド」という言葉が出てきていると考えれば実は簡単です。
つまり、ネットやWebサービスにおいては、広告もコンテンツ同様の「ネイティブ」になる必要がある、というのがネイティブアドの背景にあるとまず考えるべきだと思います。
そこで、再度交流会でシェアスルーのダン・グリーンベルグ氏に聞いた話を意訳して紹介させて頂くと、
「現在のリターゲティングなどのアドテクノロジーは、所詮ノイズとなっているバナー広告枠の最適化を行っているだけ。ネイティブアドは、テレビCM(新聞雑誌広告、そしてバナー広告)のように強制的に広告を見せることで認知を獲得している手法を置き換える新しい認知獲得のための広告のトレンドである」
という話になってくるわけです。
日本ではまだまだテレビCMの影響力が非常に強いですから、「ネイティブアドはテレビCMに代わる新たな認知獲得の手段になる」と聞くと、何を馬鹿なことをと思われる方も少なくないと思いますが。
CATVによる多チャンネルやNetflixを筆頭としたVODが普及し始めている米国においてはテレビCMの影響力はかなり限定的になっているといわれています。
Facebook広告の方がテレビCMよりもリーチ力があるというセールストークも聞かれるほどなので、Facebook広告も一つのネイティブアドであることを考えると「ネイティブアドはテレビCMに代わる新たな認知獲得の為の手段になる」というのは、トレンドの表現として実はそれほど大袈裟な話ではありません。
日本ではネイティブアドというと新しい記事広告のこと、と思っている方がまだまだ多いようですが、実際には「ネイティブアド」は広告の位置づけのトレンドであると考えて頂いた方が良いわけです。次回は、このネイティブアドのトレンドについて、IABのネイティブアドのプレイブックの解説を合わせてもう少し具体的な例を合わせてご紹介したいと思います。
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