素人であり、凡人であること
私はあらゆることに関して素人であり、特別な才能のない凡人です。でも、だからこそ、自分が知りたい!と思った分野の専門家の方や、会いたい!と思う才能ある方に会いに行ってお話を伺うと、ハッと感動します。それは一緒に企画を動かすデザイナーなどクリエイターの方々に対しても同じで、自分が生み出せないからこそ、相手に対する尊敬の念が湧いてくるのです。
そして、その心が動いた瞬間や熱量が高まった瞬間をどう伝えるかを大事にしています。媒体にもよりますが、基本的には難しいことをシンプルにわかりやすく伝えることも編集だと思っています。例えば、ITやスタートアップに詳しい人に話を聞くとき、横文字のIT用語がよく出てきますが、わからないことは恥ずかしがらずに聞いて、あるいは調べて、伝えるときはできるだけ専門用語は使わないようにします。例えば私は、あるテーマの文章を何の知識もない母や妹に読んでもらい、理解できるかどうか確認することもあります。
取材などを重ねていくと素人であるのにだんだん知った気になったり、凡人であるのにすごい人に会えているというだけでどこか勘違いをしてしまったり、ということもあるように思います。これは危険です。また、出版業界などある特定のコミュニティでの“当たり前”が、すごく狭い世界の話であったりもします。だからこそ、仕事とは関係のない全く別の業界にいる学生時代の友人や地元の親戚など、いつもと少し違う温度感に触れることも意識しています。
きちんと生活をして、日々考える
ある時期、自分の実力不足もあって、毎日帰宅は終電、土日も働くかぐったり…仕事に追われ、まったく余裕がありませんでした。そのときは無我夢中で体力も今よりあったので、それはそれでよかったと思いますが、やっぱりどこか限界が生じてしまう。人に会ったり本を読む時間がなくなって、アイデアも枯渇してしまったり、余裕がないあまり仕事相手に迷惑をかけてしまったり。あれもこれも興味が湧いて、ついつい忙しくしてしまうのですが、日々の生活に少し余白を持って、ぼーっと考え事をしたりする時間も大事だ、と思うようになりました。幸い編集者は、日々の生活で抱いた疑問や面白いと思った出来事、出会った人とのご縁が仕事の種になります。だからこそ、仕事と遊び、暮らし、それらを全部含めた人生そのものを葛藤しながらも楽しんでしまえばいいのだ、と私は思います。とにかく編集者の仕事はやりようによってはどれだけでも面白くなる、ということを自戒も込めて、最後にお伝えしておきます。
具体例もなく説得力がないまま、日々思っていることをつらつら書いてしまいました。編集者として、自分の知りたい!会いたい!やりたい!をいかに、世の中と結びつけて、ビジネスにしていくかが私の関心ごとでありこれからの課題です。好奇心を持って、とにかく思考と行動を重ねていくつもりです。
たくさんのコンテンツが溢れるなかで、私の拙い話に最後までお付き合くださりありがとうございました。この連載を通じて、たった1人でも、編集者の仕事は面白そうだ、と思ってくださる方がいたら嬉しく思います。これから私が編集・ライティングした記事などでまたみなさまと出会えるよう、日々精進していきます!では!
徳瑠里香(とくるりか)/編集者
1987年生まれ、慶應義塾大学法学部政治学科卒。在学中に「編集・ライター養成講座」修了。(株)ディスカヴァー・トゥエンティワンにて、「U25 Survival Manual Series」創刊、10冊を企画編集。その後、独立。主に、講談社「現代ビジネス」にて、企画編集・ライティングを行う。世界経済フォーラムGlobal Shapers 2014 選出。
『編集・ライター養成講座 総合コース』
講師陣は、総合誌、週刊誌、ビジネス誌、ファッション誌、Webメディアなどさまざまな分野の現役編集長や、第一線で活躍中のライター・ジャーナリスト・作家など。多くの課題添削、実践トレーニングを通じて、現場で活躍できる編集者、ライターを養成します。