リアルとデジタルで実現する理想の接客〜資生堂×アイ・エム・ジェイ

専門部隊だからこそブランドをサポートできる

加藤 デジタルマーケティングの専門部署と、事業部または各ブランドの部署との連携を課題に挙げる企業は少なくありません。御社はいかがですか。

笹間我々もそこは課題だと感じています。そこでこの4月から、各事業本部と連携をとるための専任チームをデジタル事業部に設置しました。担当者はブランドの企画や施策を計画段階で聞いたうえで、購入につなげるための提案を行います。

一方で、ワタシプラスなどのデジタル施策から得たデータをマーケティングチームに届ける仕組みを早急に確立したいと思っています。

加藤 ブランド側とは具体的にどのように連携されていますか。

笹間 一例ですが、今年1月に新発売となった50代向けの総合ブランド「プリオール」では、数十種類あるアイテムの中からヘアカラー商品をワタシプラスで先行販売しました。これが結構な数の新規顧客獲得につながりました。

その時のデータから、Webでは商品の機能性を打ち出す方がお客さまの購買意欲を後押しできること、コアターゲットの60代前後の方はスキンケアやメーキャップ商品も併せて購入する率が高いことがわかりました。

こうした情報をブランドと共有して、それぞれの切り口で訴求の仕方を確認しながら進めることができました。

加藤 デジタルで取得できるデータにより、マーケティングコミュニケーションにとってとても重要な「顧客インサイト」を補強することができます。よって、ブランドのマーケターにとって有用なものであると理解してうまくデジタル部門と連携してもらうことは大事なことだと思います。

笹間 この3年間で思ったのは、ブランドのマーケターがブランドのディレクションに集中できるように各部門が協力することが重要ということです。

それぞれの専門部隊がマーケターのサポート部隊として動き、その結果をマーケターにレポートする。マーケターはレポートから新しい顧客インサイトの発見や態度変容につながる施策を考えることに集中できます。

デジタル専門部門としては、データを読み解き、スピーディーにブランド側に情報共有することを意識しています。

加藤 データをマーケティングに生かすには仮説を立てて分析をしていくプロセスが重要ですが、仮説を立てられる人材は非常に少ないのが現状です。

笹間 仮説を立てるには、業界や社内事情に精通している必要があります。連携専任チームを置いたのはまさにそのためですが、人材育成ローテーションのような仕組みも必要かもしれません。

仮説立案と検証を経験すれば、コミュニケーションプランが販売やリピートまでどのようにつながっているか見えてきます。そうすればマーケターが欲しいと思う切り口で情報提供できるようになるでしょう。

加藤 デジタル部門と店頭との連携はいかがですか。

笹間 2013年度ベースでは、ワタシプラスと連携する店舗会員の店頭でのお買い上げ金額は約20%増加していますので、Webは店頭の売上に貢献できていると思います。

WebBCによるカウンセリングでは、店頭では聞きにくいような本音の質問をされるユーザーさんが多くいらっしゃいます。そうした生の声をどのように整理し販売に生かしていくかが重要です。

加藤 宝の山であるデジタルデータをどう店舗の売上につなげるかも今後は重要なところですね。

笹間 ワタシプラスを訪れる方のうち、リアル店舗と連携する会員の20%弱が、サイトを見て1週間以内に店舗で商品を購入しています。そういう方はオンラインで価格がわかるページや商品カタログを閲覧しています。つまり買うモードに近いということです。

そういう方にどんな施策を打つのが良いかを常に考えています。

一例として、ワタシプラスの優良顧客をクラスタリングして、それぞれにお勧めの商品やブランドをメールで配信したところ、コンバージョンレートがほぼ倍になりました。データ分析は本当に大事だと実感しています。

加藤 海外の事例ですが、某自動車メーカーがオンラインで試乗予約した顧客のWebサイト閲覧履歴やスコアリングされたデータをディーラーの営業担当者に情報連携し、売上を伸ばしているというケースを聞いたことがあります。店舗を持つ企業ではそういった手法も増えてくるかもしれません。

笹間 データを活用することでどの販売チャネルでもBCが「いつものこれでよろしいですか?」と接客をスタートできる。また、いつでも必要な時にそっと手を差し伸べられる。そういう環境づくりをしていきたいと思います。

加藤 蓄積したデータを整理して活用していくことで、今後ますます可能性が広がりそうです。

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