ネイティブアドの定義は、Googleの検索連動型広告の歴史から考えれば簡単だ

広告が表示できる媒体が、新聞や雑誌のようないわゆる「メディア」だけではなく、Googleのような検索サービス、FacebookやTwitterのようなSNSになると、媒体の変化と共に広告のあり方も一緒に変化が求められます。

ただ、ウェブサイトやスマートフォンアプリにおいて、従来のマスメディアの広告的に、ある種、強制的に広告を表示する行為はユーザーの離反を招き、サービス自体の価値を低下させるリスクをはらみます。つまり、「ネイティブではない広告」はサービスにとって両刃の剣となるのです。

そこで重要となってくる考え方が、コンテンツと同様にネイティブに存在する「ネイティブアド」という考え方である、と言えるのではないでしょうか。

そういう意味では、ネイティブアドを新しい記事広告と考えるのは、ネイティブアドの本質を大きく間違えていることになります。

時に一部過激なネットユーザーからすると、Googleの検索連動型広告やFacebookのインフィード型広告も、ユーザーの体験を阻害するものとして批判を受けがちですが、当然無料サービスにおいては広告収益が必須の収益源であり、広告が全てのWebサービスから完全に無くなることはないでしょう。

また一方で、ユーザーのメディア消費時間が既存のマスメディアからネットやスマホにシフトしていることを考えると、当然広告主もそのネットやスマホを通じてユーザーの認知獲得を模索することになります。

そういう意味で、ネイティブアドにおいて最も重要なのは、ユーザーの離反も受けずに、広告主のニーズも満たすことができる真にネイティブなバランスをとり続けることであるということもできます。

ここであえて、一歩ネットのネイティブアドから引いてみて、マス広告を振り返ってみましょう。

実は現在のテレビCMや新聞・雑誌の広告の形は、ある意味そのメディアが生まれた後に、そのメディア毎に視聴者や読者の期待と、広告を出す企業側のニーズをバランスする形として落ち着いた形といえるはずです。

そういう意味ではテレビCMや新聞・雑誌の広告もある意味では、当時の時代においては視聴者や読者にとって「ネイティブアド」的なものとして今の形に落ち着いたと見ることもできるでしょう。

実際に多数のテレビCMがテレビ番組と同様にコンテンツとして視聴者に楽しまれてきましたし、読者に情報として重宝されていた新聞広告、雑誌広告も多数存在します。

それが技術の進歩やネットの普及による読者の情報入手能力の向上により、従来の広告のお作法が「ネイティブでない広告」と見られやすい環境になり、ノイズとしてみなされることが増えてきたと考える方が正しい整理と言えるかもしれません。

実際、象徴的な現象として、テレビ番組の録画視聴時のCMスキップ問題や、情報量の増加による広告の認知低下の問題があげられ、いわゆるマス広告にとっての環境は年々厳しくなっています。

そういう意味では、マスメディアの広告枠においても、視聴者や読者に見てもらうための「ネイティブ」化が必要とも言えるわけで、ダン・グリーンベルグ氏の「ネイティブアドはテレビCMに代わる新たな認知獲得の手段になる」という発言は、実は広告業界全体の大きなトレンドの変化を示していると受け取ることもできるのではないかと思います。


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徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)
徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

徳力基彦(アジャイルメディア・ネットワーク 取締役 CMO ブロガー)

徳力基彦(とくりき・もとひこ)NTT等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの一人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。書籍「アンバサダーマーケティング」においては解説を担当した。

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