モノとモノのつながりとしてみるのがIoT
アップルウォッチやアマゾンのダッシュ・ボタンのようなテクノロジーは、スマートデバイスの機能拡張というよりも、別の見方をすべきです。それはIoTの言葉通り、「モノとモノのつながり」として見るということです。逆に言えば、高機能化のひとつの極は人工知能のように、人間の脳の思考の過程をコンピューティングによって高めるということにあるのですが、IoTはむしろ人間のその思考をある意味取り除くことで実現する便益です。
インターネットやデジタルの技術が、人間中心主義に留まっている限りは、経済的な交換は、人間から見ればすべて「生産」や「消費」です。ただ、人間の要素を取り除いて、これらをモノとモノのつながりとしてみると、それは材料の変質や加工、再生産に変わります。
その意味でIoTとは、人間を介さずにモノ同士がネットを通じて連絡することによって生まれる流通や消費を究極的に目指す技術であると言えます。このようにモノ同士がコミュニケーションすることが可能になれば、世界の事態をすべて「モノとモノの関係」に変換する見方が可能になると思います。その際に重要になるのはデータです。モノとモノがどのように移動しているかというデータがあってこそ意味が増します。IoTは、モノとモノの関係を最適化するようなテクノロジーとして理解されるでしょう。
例えば都市のデザインは、クルマ、ビル、交通機関などの物体以外に、エネルギー媒体となる電気、水、通信から、気温などの天候、計測される移動距離、時間などの尺度によってできています。それを全体として最適化されるモノ同士の「時計と信号」ができれば、それに沿って人間が動いた方が、都市全体のポテンシャルを最大化できるかもしれません。
グーグルの自動運転車の技術もそういった世界を目指していますし、アップルウォッチやアマゾンのダッシュ・ボタンはそのための「時計と信号」の先駆けです。未来には、ブランドや企業も同様に、商品やサービス自体の動きを予めモノ同士で連絡し合えば、無駄を極力少なくした製造や流通、消費が可能になるかもしれません。
その世界はマーケティングにとっての天国であり、かつ終着駅のように思えます。IoTはそのようなマーケティングの未来を含んだテクノロジーなのです。