ソーシャルでPR・商品開発・顧客サポートの改良へ
Martin:50年もの間、ファンの人々はArby’s サンドイッチを食べてきて、多くの人がそのソースがなくなることを恐怖にさえ思っていることを、私たちはソーシャルメディア分析から感じ取りました。
ソース商品は、ソーシャルリスニングによるインサイトから製品開発部によって商品化され、ちょうど2013年のハロウィンの時期に実際に発売したのですが、同時にソースがなくなることを本当に怖れているファンに対して、自分のソースレスな経験やストーリーを募集しました。それが“ソースポカリプス”キャンペーンです。
ファンの皆さんは、ソースをつけないチキンやソースレス・ミートローフやパサパサでドライなソース無しスパゲティがまずくなる恐怖、という投稿を次々にポストしてきました。そうしたリアルなソースレス体験や話を 、まるでホラー映画のポスター仕立てにしたのです。
そのキャンペーンは、パニックのように、またたくまにソーシャルメディア上で広まりました。 Facebook、Twitter、ブログ、記事など、たくさんのオンライン上の会話が生まれました。
制作したポスターはコメントやストーリーを投稿したファンにサプライズで戻したり、そのファンが住む地元のビルボードで広告したり、ファンをローカル・ヒーローに仕立てたりと、どんどんエスカレートしていきました。
その結果、ソーシャルメディア上でのツイートは1年前の2倍になり、50万アーンドメディア・インプレッションに上りました。
かなりターゲット戦略をしぼりこんだ、コスト効率の良いキャンペーンとなりましたし、セールス的にも、Arby’s ソースの発売からまもなく5万ボトルのソースが売れる、 過去最高の新商品キャンペーンとなったわけです。
結城:賢いリアルタイム・マーケティングの成功事例ですね。そしてファンのニーズやインサイトをソーシャルメディアのつぶやきからかぎ取って、本当に製品化してしまう組織の柔軟性と協力体制が素晴らしいですね。
まさにパニック状態という言葉がふさわしい、ファンに対する嬉しいサプライズだったと思います。こういったソーシャルメディア上でのファンとのエンゲージメントは計画的には進まないと思うのですが、他部署とはどのように連携されているのでしょうか?
Martin:キャンペーンによって差はありますが、PRチームとは会議をし、私たちが行おうとしているキャンペーンとPRをどう上手に結びつけられるかを話し合います。
商品開発チームともミーティングをし、ソーシャルメディアを通して発見した「顧客が商品についてどう思っているか」を伝え、話し合う場を設けています。
ソーシャルメディアでの気付きを素直に聞き入れてくれる部署とそうではない部署がありますが、私個人はソーシャルメディアを効果的に使うことで、PR・商品開発・顧客サポートのどの面に関しても改良できるチャンスが増えると思っています。
結城:マネジメントの方たちには、その“気付き”などをどのように伝えているのですか?
Martin:エグゼクティブチームとは毎日会話を通して、ソーシャルメディア上で何が起きたのかを伝えています。
ちなみにレポートはツールやダッシュボードを使い、データとともに顧客の反応、最も良い投稿、明日起こりうる事象などの報告をEメールで行っています。
結城:多忙を極めるマネジメントの方々が、ソーシャルメディアの声に耳を傾けてくださるのは、素晴らしいことですね。
とても重要なことなのに、現場に任せっきりになりやすい部分だと思うのです。最後になりますが、デジタル環境が急速に進化するこの世の中で、もしジョシュさんのチームが今現在の知識に加え、学びたいものがあるとしたら何でしょう?
Martin:技術面やマーケティング、分析など、すべての分野ですね。特に、モバイルについてはもっと勉強する必要があります。
現在モバイルを使用する人が非常に多く、特に私たちのようなファストフードブランドのコンテンツはモバイル上で閲覧されていることが多いので、まず一番にモバイル上ではどう見えるのかを考慮しています。
結城:日本企業でソーシャルメディアを担当するマネージャーに、成功の秘訣など、アドバイスはありますか?
Martin:大企業であればあるほど尻込みしがちになりますが、顧客とのつながりを強め、コミュニケーションを図る便利なツールやテクノロジーがあることをもっとよく知り、新しいことにも積極的になってほしいです。
ソーシャルメディアはコミュニケーションのためだけではなく、顧客サービスの向上や、マーケティング、経営にこれからも役立っていくと考えているので、ぜひいろいろと試していただきたいと思います。