医薬品では難しい課題提示を効果的に伝達 後半の課題解決シーンは情報過多の傾向――第一三共ヘルスケア
第一三共胃腸薬プラス「スイーツ」篇
*テレビCMはこちらのサイトでご覧いただけます。
第一三共ヘルスケアの第一三共胃腸薬プラス「スイーツ」篇は、タレントの石塚英彦さんが起用されたCM。全体の構成は、コーポレートロゴ→課題提示→製品提示→課題解決→製品カット→ブランドスローガンという流れになっている。
総合評価スコアは7.2。医薬品の課題提示の部分については、一般的に感情的にネガティブな印象を与えるためスコアが下がる傾向にあるが、本CMにおいては8.2と高く、特に感情関与のスコアが高いレベルで維持され、注目のスコアも適度なレベルを保っている。課題提示は効果的に伝達されている。
一方、後半の課題解決シーンはスコアが6.3と課題提示に比べると落ち込みが見られる。理由としては、課題提示の時には店舗内の設定だったが、課題解決のシーンでは店舗内ではなく場面設定が異なって見えてしまい、見る人に文脈がうまくつながって見えていない可能性がある。また、ナレーターが替わったこと、画面上に文字が現れたこと、シーンが突然変化していることなど、情報量が多いこともスコアが低い原因だと考えられる。
古畑氏は「CM全体の文脈をより明確にすることで、効果がさらに高まると考えられます。例えば、製品提示から課題解決までのつながりを、その前の課題提示の設定のまま変化させないで構成するとよりつながりが分かりやすくなります」とアドバイス。
また、「課題解決シーンにおいてメッセージ量を減らすことは、CMの文脈を明確にして、記憶にとどめる上でも効果的です。一般にナレーションとテロップを使って同時に多くのことを言うならば、登場人物やビジュアル要素を減らすなどしてメッセージ量を調整するとよいと思います」と付け加えた。
効果的なシンプルな背景の車両提示シーン 消費者のポジティブな行動に強い影響――本田技研工業
本田技研工業のN-ONE「ドアの音」篇は、コーポレートロゴ→ドア説明→製品提示→ブランドスローガン→製品カット→CI(コーポレート・アイデンティティ)で構成されている。
総合評価スコアは6.7。冒頭のコーポレートスローガンと「Hello, small world!」というブランドメッセージを提示する部分では、男女で差が見られた。女性の感情関与があまり落ちていないにも関わらず、男性は落ち込みが大きく、混乱していることがうかがえる。
このシーンはビジュアルと音声が複雑に交錯しているため、男性よりも脳におけるマルチタスク処理が得意な女性に対して効果的だった可能性も考えられる。古畑氏は「コーポレートロゴやスローガンは、最後のカットに集約するなどしたほうがより効果が上がるかもしれない」と話す。
ドアの説明部分は、女性よりも男性に効果があった。男性がこのシーンにより関連性を感じたからだと思われる。また、このシーンの後半では、効果の大きな落ち込みが見られた。これについて古畑氏は「ドアが組みあがっていき、その後にカットが変化し、ドアを閉める手だけが登場しました。これによって全体文脈がうまく理解できなかったことなどが原因ではないでしょうか。また、顔が映らずに体の一部分だけが切り出されていることに対して、『これは誰なんだろう?』と本能的に不安を抱きます。ドアを閉める手だけ映っているところで感情のスコアが落ちているのはそのせいです。したがって、ドアの説明部分はワンカットにして、さらにドアを閉める人を顔まで映るように入れると、落ち込みは避けられるのではないでしょうか」と提案した。
後半のシンプルな背景における車両の提示は、一般的に極めて効果的であり、本CMでも同様の傾向が見られた。視線は車あるいは「N-ONE」のNに行き、感情関与と記憶のスコアはそれぞれ8.9、8.6と非常に高かった。これは、消費者の行動意向にポジティブな影響を与えている可能性が高いという。
参加企業からは、自社でアンケート調査したときはよい結果だったシーンが、ニューロリサーチの無意識部分を計測すると全く逆の結果が出ていることや、「顔全体が映っていない」「体の一部分だけを切り取る」ことが、無意識に不安を抱かせることなどについて、辻本氏に質問があるなど、発見の多い結果報告となった。
次回は、今回のCM分析結果のプレゼンテーションの後に行われた、4社のCM担当者による意見交換会の模様をレポートする。
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