切り口とアイデアをペアで提示することで、説得力が生まれる
——社内プレゼンについてもお話を伺いたいと思います。社内で新しい試みへの理解を得たり、話を通すのは難しいと思いますが、どうされていましたか。
秋山:リッテルラボラトリーは新しいことをすることが前提の部署ではありました。ただ、途中であれこれと横やりが入ると、上手くいくものもいかなくなってしまいがちです。そうしないために、確実に遂行するので、内容については全部裁量を自分に預けてほしいと話しました。
——天秤を作りますと言ったときは、驚かれませんでしたか?
秋山:天秤は完全に水面下で進行していて、ある日突然完成していた、というような(笑)。新しいものをつくるときって、社内の人もなかなか理解しづらい。だから強引にでも一回ものを作ってしまうというのがすごく大事だと思います。その結果、社内の人たちも興味を持ってくれて色々なアイデアを出してくれたり、一緒にビジネスを作れる土壌ができてきたと感じます。
——すごい天秤はテレビ番組などでも多く紹介されていたので、そこからまた社内の評価も変わりそうですね。小林さんの場合はいかかがでしょうか。
小林:先ほども紹介した「エモパーのあるスマホライフ」という動画は、実は社内用に作ったものなんです。開発している最中に、社内の関係部門から全く理解されないので、動画で説得しようとして作ったものです。ただ、意外な効用として、動画はプロトタイプにも有効だということがわかりました。メリットは2つあって、ひとつは締め切りが来ることです。仕様を決めるのはもう少し後でいいと思っていても、動画の撮影があることで決めざるを得なくなる。もうひとつは、盲点が見つかることです。それまで頭の中に浮かぶのは象徴的な使用シーンばかりだったのですが、動画を制作する中で、その時映り込んでいる他の環境や人はどう関わっているのか?といったことを考える必要が生じてくる。そういう意味で、動画を作るという単純なやり方もプロトタイプの方法論になるのだと感じました。
もう一つ、社内を通せた大きな理由としては、コンセプトの中に切り口とアイデアがはっきりあったことだと思います。切り口というのは、今のスマートフォンの機能とどう違うのかがちゃんと見えていること。アイデアは、具体的になにがどのように実現され、どんな体験が面白いのかがはっきり見えていることです。この2つがペアになっていたので、社内に対する説得力があったのだと思います。
——動画を作ることで検証になるのは面白い発見ですね。MESHの動画はどの段階で作られたのですか?
萩原:いくつか動画は作っていますが、最初のコンセプトムービーは、完成前に制作して昨年のMaker Faire Bay Areaで公開したものです。今は、最新版のMESHを使ってユーザーが実際に作ったものを動画で公開しています。
——すごい天秤も、動画を作られていましたね。
秋山:先日SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)インタラクティブというアメリカで行われたイベントに出展したのですが、その時に動画が必要だろうということで作りました。日本語の字幕もつけたものもあります。エモパーやMESHのように気軽に持ち運べるものではないので、雰囲気だけでも動画で伝え、あとはイベントなどで実際に触れていただければと考えています。