デジタルPRだれもやらない問題と、バウハウスの間

理由の1つは「デジタルプロモーションは、誰でもできるものではなくなった」のだ。

昔は、誤解を恐れず言えば、
Flashでバリバリ動く、かっこいいサイトをつくればよかった。

おそらく全世界初のオールFlashサイト、EYE4U。今見るとメチャクチャダサいが、1999年当時、全米が震えた。

 

この文化は、スマホ、とくにiPhoneの台頭とともに衰退した。

そもそもFlashはiPhone上では動作しない。
iPhone上で動作するのは、HTML5、WebGL(最新のOS)、アプリならObjective-C、実際に誰でも手を動かしやすいのはOpenFrameworksやUnityなどだ。最近のキャンペーンでは、MaxやArduinoなどの知識もいる。

いずれにせよ、PCのブラウザと、スマホのブラウザでは作り変えなければならなくなったので、手間とかかる技術レベルは倍に増えた。
Webデザイナーでもがんばって覚えられる範疇に入っていたスクリプティングが、どわわわーと増えてきてしまって、「もう全部は無理っすよ先輩」状態になっていった。

 

これにより、広告の「デジタル」は、Flashバリバリスペシャルサイト文化から、
デジタルPR動画広告に分化した。

デジタルPRとは、ざっくり言うとAdGangっぽいものに、テクノロジーが乗ったもの。
「増上寺の前でみんながスマホをシャカシャカしたら、東京タワーの照明が連動してきゃりーぱみゅぱみゅが歌って踊って何だかすげええーー!!!」的「こんなことできるのね最近は」があるプロモーション。
PR手法のひとつとしてのデジタルだ。

もうひとつは、動画広告。
YouTubeは「マーケティング手法としてWeb動画をもっと使おう」という路線をつくるために、「HHH戦略」なんかを説きながら、いかに企業が戦略的にYouTubeムービーに資本を投下してくれるか、などということをやっている。

あるとき、クライアントが口を揃えて「HUBムービーをつくれ」と言い出した。
「LOVEムービー」と聞きまちがえて「うんうん、やっぱり愛が人々の心を動かしますものね」などと答えて、微妙に会話が成立してしまったことがある。
あとで「中村さんラブじゃなくてハブっすよ」と教えてもらって、本当によかった。

某有名アートディレクターが、「御社」と「弊社」をずっと取り違えていて、クライアントの前で「弊社は本当にすばらしいですね。それに比べて御社ときたら、本当にどうしようもない会社ですよ」と言ってしまった、という逸話を思い出す。

 

次ページ 「いい感じのムービーをつくるのは、」へ続く

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中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

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