デジタルPRだれもやらない問題と、バウハウスの間

話を元に戻そう。

いい感じのムービーをつくるのは、お金がかかる。
また、デジタルPRは、知見と技術が必要な世界になり、従事できる人が少なくなってしまった。

また、デジタルは、「テキトーにやってみる」予算枠のものではなくなった。
プロモーション予算には「6:3:1の法則」というものがある。
「6」は、メイン商品を売るための実弾となるTV-CM、「3」はPRやキャンペーン、残りの「1」で、けたぐりのような全く新しいコンテンツや、未知なものをやってみる、というものだ。(※7:2:1という人も)
Webはジャンルが成熟して、「1」じゃなくなってしまった。

 

これは、ヒジョーにまずい。

 

日本は、数年前は世界トップレベルの技術力だったのだが、ここ数年で目立たない存在になってしまった。実はその背後には、上記のパラダイムシフトが起きている。もう本当は「デジタル広告強いジャパン」はゼロリセットされていると思ったほうがいい。

もっと、若い人の中にスペシャリストが増えて、好き放題に考えて、どんどんつくって世の中に出していくような場じゃないと、デジタルインフラや文化の成長速度についていけず、あっという間に、動画広告(=スケールダウンしたCM)と静止画バナー(=ちっちゃなマス広告)だけのものになってしまう。

そもそも広告の歴史なんて、
1800年ごろにイギリスで整備された、まだまだ歴史の浅いものだ。
そのなかで、デジタル広告の歴史なんてメチャクチャ浅い。
いまのデジタル広告では、今たまたまアレとコレが流行っていても、何が流行っているかすら、日進月歩で様変わりしている。

つねに変わらず必要なのは、ベースのプログラミングスキル。そして、おもしろいことを考えるだけじゃなく、全部自分たちでやりきる力だ。
CMやグラフィックは、制作の細かいフローがすべて出来上がっているが、デジタルにはそれがない。つくりかたをつくらなければならない。

これはめんどくさいです。失敗もします。
でも、いやそれやらなくちゃ、どんどんつまらなくなるでしょこの業界。

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中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)
中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

中村 洋基(PARTY クリエイティブディレクター)

1979年生まれ。電通に入社後、インタラクティブキャンペーンを手がけるテクニカルディレクターとして活躍後、2011年、4人のメンバーとともにPARTYを設立。最近の代表作に、レディー・ガガの等身大試聴機「GAGADOLL」、トヨタ「TOYOTOWN」トヨタのコンセプトカー「FV2」、ソニーのインタラクティブテレビ番組「MAKE TV」などがある。国内外200以上の広告賞の受賞歴があり、審査員歴も多数。「Webデザインの『プロだから考えること』」(共著) 上梓。

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