ついに、兆しが見えた。
2回の反省を活かし、僕はハンドソープの調合に磨きをかけました。
仕事終わりに、ハンドソープを開発する日々。
(この時間は、無益なんかじゃない)
うつろな目で何度も自分に言い聞かせました。
そして、ついにハンドソープの黄金比を発見しました。
また、東さんからの提案で、
より滑りやすいボールを使用することにしました。
いよいよ、3回目の体験会です。
この日うまくいかなかったら、
ハンドソープボールは諦めた方がいいかもしれない。
満身創痍で挑んだ3度目の正直。
恐る恐る試合を始めると…
なんと、場は予想以上に盛り上がりました。
ハンドソープも、ベタベタにならず、
かといってすぐに乾くでもなく、
理想的なハンドソープの体をなしていました。
熱気溢れる空気の中で試合が進み、
その中で次々と新しいスポーツ用語が生まれていきました。
試合前につけるハンドソープは、「スターティングソープ」。
試合中にボールを落とした際につけるのは、「アディショナルソープ」。
キーパーがシュートをセーブするも、
キャッチできなかったら「ノーゴール、ワンソープ」。
ゴールを決められ、かつキャッチできなかったら「ワンゴール、ワンソープ」。
ボールがフィールド外に出たら、
ボールに直接ハンドソープをつける「ダイレクトソープ」。
しかも、誰かがいいプレイをする度に自然と
「ナイスソープ!」
という声援が飛び交うようになっていました。
正直全く意味が分からない言葉ですが、
みんなとても楽しそうです。
ハンドソープボールが短時間で、
ぐっと進化していくのを体感できました。
東さんと目が合いました。
自然とお互い頷いていました。
ある臨界点(スポーツ・シンギュラリティ)を超えた瞬間でした。
でも、まだ改善の余地があるのではないか。
そう思い、一試合終わったところで円になり、
参加している皆様の意見を聞くことにしました。
ある男性が、おずおずと手をあげました。
「あの、ソーパーなんですけど…」
繰り返しになりますがソーパーとは、
ソープボトルを持った人のことです。
男性が続けます。
「チームメンバーに加えた方がいいと思います」
ハッとしました。
実はこのソーパー、
審判に近い中立的な立場をとっていました。
でも、アディショナルソープを求めて
ソーパーの元へ走る間、
フィールドプレイヤーが一人減るため、
その連携スピードがかなり大事になっていたのです。
確かに、ソーパーがチームメンバーである方が、
色々な戦略も考えられるし、
スポーツとしての深みも出そうです。
早速そのルールを反映させ、もう1試合やることにしました。
すると、どうでしょう。
より一層、盛り上がったのです。
なんかもう、みんなゲラゲラ笑いながらも、
真剣にスポーツに勤しんでいるのです。
「勝ったら嬉しい。負けても楽しい。」
が構造として成立している証拠です。
終了後、今までなかったリアクションが飛び出ました。
「今度は友達を誘ってまたやりたい!」
ハンドソープボールが、
ひとつのスポーツとして認められた瞬間でした。
僕はハンドソープにまみれた手で、ガッツポーズをしました。
その後ハンドボールは、
様々なメディアで取り上げて頂き、
予想以上の反響を呼んでいます。
そんな中、ふと思いました。
もっと沢山のスポーツを創れないだろうか。
更に、それらをまとめた、
新しいスポーツジャンルを創れないだろうか。
つづきはまた来週。