ブランドを強化する3つのこだわり
米子発のブランドとして、大手メーカーの商品にも負けないブランド力を構築するため、丸京庵には次の3つのこだわりがある。
1.地域力を高める
米子発のブランドであるということは、丸京庵の重要なアイデンティティ。まずは地元から愛されるブランドであることが、県外、そして海外に展開する上で重要な基盤になると考えた。地元の人に「どら焼きと言えば丸京」「米子と言えば丸京」と感じてもらうことを目指して長年にわたって取り組みを進めており、例えば1998年、米子市から地元の運動公園・東山運動公園陸上競技場のネーミングライツを取得して「どらやきドラマチックパーク米子市民球場」と名付けた。いまでは、地元の子どもたちから「どらパー」の愛称で親しまれる存在になっている。同公園で開催されるスポーツ大会には毎回スポンサードして、景品としてどら焼きを寄付している。
また、2002年に初開催したイベント「丸京どらドラ工場祭」は、毎年の恒例行事となり、今年で14回目を迎える。工場を開放し、どら焼きづくりを体験したり、出来たてのどら焼きを試食したりするイベントには、県内外から2日間で1万7000人もの人が訪れるという。さらに、4月4日を「どら焼きの日」(どら焼きを食べて「し(4)あわせ」になろうに由来)として制定しており、この日には米子の空港やホテル、タクシーなどさまざまなところで、丸京が3万個のどら焼きを無償配布する。「工場には、月に3回、年に30~40回ほど、小中学校の社会科見学の団体も訪れます。子どもの頃から丸京に親しんでいただくことで、5、10、15年後に花が咲くと考えています」。
2.独自の商品力
丸京製菓のどら焼きはすべて、凍る直前の温度域で食材を一定時間熟成させる「氷温熟成製法」で製造されている。これにより素材の旨味を引き出すとともに、生地は柔らかな食感に、また“甘抜け”の良い(甘いけれど、甘さが口に残らないことを言う)味になり、長時間その鮮度を維持することも可能になるという。
小売りにとっては、一定期間店頭に並べておけるメリットがあり、消費者にとっては、常備菓子として自宅に置いておけるメリットがある。
「この製法を流通半生菓子業界で採用したのは当社が初めてでした。東京・名古屋・大阪の企業であれば消費地が近くにあるので、商品を日持ちさせる必要はありませんが、米子から食品を供給するには、賞味期間が長くないと扱ってもらうのが難しい。他社との差別化要素として、2002年以降は一貫してこの製法でつくり続けています」。
3.個性あるパッケージ
スーパーマーケット店頭で他の商品に埋もれることがないよう、個性ある包装にこだわっている。「加工食品だけで1万点以上のアイテムが並ぶスーパーマーケット。その中から消費者がどうやって商品を識別するかと言うと、包装の形なのです。スーパーの買い物客は、同じ商品を買い続けるリピーターがほとんどですから、他社との明らかな違いをつくり、訴求しなければスイッチングが起こりません」。例えば、5個のどら焼きがずらりと並んだパッケージは、丸京製菓が業界で初めて形にしたものだ。パッケージデザインは全商品、形・色・文字を含めて鷲見社長が自ら考え、外部デザイナーが形にしている。
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