- 一心堂本舗 代表取締役 戸村 憲人 氏
- カインズ 代表取締役社長 土屋 裕雅 氏
- 参天製薬 薬粧事業部 マーケティング室 室長 前田 英人 氏
商品への関心を喚起するコラボ
—顧客を獲得するために、ネットやリアルの手法をどのように活用していますか?
戸村:一心堂本舗は、もともと自然素材の菓子を調剤薬局で販売していた会社です。2013年リニューアルした銀座・歌舞伎座への出店がきっかけで生まれたのが「歌舞伎フェイスパック」。歌舞伎の隈取をデザインした商品で、店頭とECで販売。1年4か月で累計販売数は70万個を超えています。
発売当初、プレスリリースを行い、乾いた状態のフェイスパックを300件郵送したところ、さまざまなメディアに取り上げられ、購入された方のSNS投稿もあり認知度が高まりました。2商品目以降はネットでの人気も意識し、上野動物園のスマトラトラや、劇団四季の「キャッツ」など、意外性のあるコラボレーションを行い、話題化を図っています。海外のお客さまにもお土産として人気で、店頭でたくさん購入していただいています。
土屋:カインズは全国に約200店を構える、ホームセンターのチェーンストアです。競争力を高めるために、10年以上前から自社オリジナル製品の開発に注力しています。
そこで活用しているのは、従業員約1万人の声。「こんな商品が欲しい」「この商品は、ここを改善してほしい」といった声をイントラネット上で集めています。従業員も、家に帰れば「生活者」ですから、新商品の発売時には従業員に試してもらい、役職に関係なくパートの方の意見も良いものはどんどん取り入れています。
店頭だけでは使用方法が分かりづらい商品には、QRコード付きのPOPをつけ、ウェブ上での情報提供も進めています。
前田:参天製薬は、主に眼科領域に特化した製薬会社です。私たちの調査では、成人男女の50%は目の健康にそれほど興味がなく、ドライアイに罹患している人の約40%は眼科医の受診や、OTC医薬品(一般用医薬品)も使っていないというデータがあります。この「アイケアを行わない層」をいかに取り込むかが、私たちの課題。
そこで、広告には例えば、織田裕二さんやももいろクローバーZさんなど、目力があり、コアなファン層を持ち、話題性がある方を起用しています。他にも「エヴァンゲリオン」とのコラボを行いました。キャンペーンの企画では、テレビは見なくてもネットは見ている人にもいかにアプローチするか、ネットでの言の葉にのりやすい文脈をいかにつくり、興味を持ってもらって、ドラッグストアまで足を運んでもらうか、を常に考えています。
また買いたくなる仕組み
—今いる顧客を商品やサービスのファンにし、育てていくために実施していることは。
前田:医薬品の場合、広告に関する規則が他の業界よりも厳しいですが、それでも、有名人・キャラクターを起用したキャンペーンを展開する際は、「目に絡めて、そのキャラクターが好きな方が喜ぶようなレア感を出す」ことを心がけています。最初に買っていただいた方にリピートしてもらうことは、大きな課題です。しかしアイケアに関する医学的な話をしても、興味を抱いてもらいにくい。ですので「これは何をしてくれる商品か?」と明快にコミュニケーションできるかが大事になってくる。例えば、「目の病気は最悪の場合、失明する可能性があり、治らない。長寿の時代に、目が見える生活を送り続けたいなら、アイケアは重要だ」といったこと。こうした啓蒙活動を薬事法を遵守しながらコツコツと行っています。
土屋:ウェブでの商品説明や、ECにも力を入れていますが、全国に200店のリアル店舗があるというのが、当社の最大の強みだと思っています。ネット上だけで完結する仕組みではなく、ネットとリアルの相互送客を意識した「シームレスな買い物環境づくり」を目指しています。
例えば、いつも店に来ていただいているお客さまも、重いものやかさばるものはネットで購入して配達してもらったほうが便利でしょう。春先なら、トマトやキュウリなど季節の野菜の植え方、それに必要な道具の紹介などもリアル店舗とネット上の双方で行っています。
ネットという入り口があることを知っていただくために、あえて人気商品である収納ケースのネット限定商品を作ったりもしています。「実店舗ならでは」の取り組みの部分では、インテリアコーディネーターの資格を持つ人間が住まいのコンシェルジュとして相談に乗るなど、ネット上だけでは行えないサービス・接客も強化しています。
戸村:コラボ商品を出す際に念頭に置いているのは、コラボ先のファンの方に喜んでいただくこと。例えば、「歌舞伎フェイスパック」なら、歌舞伎ファンの方に喜んでいただけるように、歌舞伎や隈取の説明、市川染五郎さんの歌舞伎に対する想いなどを記載した案内を、商品に同封しているんです。海外の方にも分かるように、日本語と英語で書いています。そうやって、コラボ先のファンの方に喜んでもらえると、自ずと「次はほかのデザインフェイスパックが欲しい」という声が上がってきます。そういった声にどんどんこたえていくことで、結果当社のファンになってもらえることを目指しています。今後は中国にも進出し、ファン拡大を目指していきます。
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