ペプシネックスゼロ・桃太郎のCMは「クリエイターとクライアントが同じ夢を見た」からできた【前編】(ゲスト:多田琢さん)

画面から見えるのは「人と背景」の2つしかない

権八:後から聞くと、すべての要素が奇跡的というか、色々なことが積み重なってできた仕事なんだなと思いますね。

澤本:ペプシのCMを見て、久々に「CMはこんなに凄いこともできるんだ」と思えたね。チマチマしたものや、お涙頂戴ではなくて、全然違う映像表現として、映像も音楽もすごいし、出演者もうまく、設定も全部センスがいい。すごくいいものを見たなと。それをPVでも映画でもなく、CMでやってくれたことがうれしかった。

権八:僕らは爽快感がありましたね。広告の可能性、広告はこんなに凄いことができるということを目の前で見せてくれて、痛快でした。

澤本:話が飛んでしまいますが、多田さんのつくるCMは、最近はロケ撮影が多いですか?

多田:それは2013年につくったキヤノンのCMの頃から意識的にやっているんです。スコットランドのグラスゴーで、雄大な景色の中で妻夫木聡くんが風を撮影する「The Wind」というCMなんですけど。その前に映画『007 スカイフォール』を見て、めちゃめちゃ感動して、かっこいいなと思ったんです。役者ももちろんだけど、これはロケ地がよかったなと。映画でもCMでも、画面から出るもの、見えるものは「人と背景」しかない。

日本のCMはタレントを使って、人にばかり予算をかけてつくられるけど、背景もとても大事なんじゃないかと思って。それで、背景を追求しようと思ってロケに力を入れています。今は、見たことのない風景ほど強力なタレントはいない、と思っているぐらい。トヨタのハリアーもそうだし、ロケーションは非常に大事だと。

澤本:多田さんが手がけられたCMを見ると、ロケが多くて、広告として大きく見えますよね。スタジオでやると、どうしても箱に見えてしまって、ちょっと小さいなという印象がある。それは自分でつくっていても否めないと思っています。

多田:スタジオに行く時って、テンションが嫌じゃない? スタジオは暗いし(笑)。ロケに行くと、自分が行ったことのない世界を生で見られるし、食べ物もおいしいし。まあおいしくなくても、面白い。だからロケが好きだし、あとは、役者にブルーバックで芝居をさせたくない。本当の芝居をブルーバックで、できるわけがないと思う。人と絡んで、その場所でテンションが上がるから出るセリフや芝居があるはずで、スターウォーズみたいに全篇合成的なつくり方はしなくてもいいならしたくない。

中村:さて、多田さんのお話は1回分ではもったいないので、続きは次週に! 次週もお楽しみに。感想やご意見はsuguowa@tfm.co.jpまで、お待ちしております。

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構成・文 廣田喜昭

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