生活者と新聞メディアとの接点拡大へ
メディア環境の劇的な変化が加速しつつある昨今、あらためて新聞メディアのパワーの低下を指摘する論調に接することが多くなっているように思います。
さまざまな調査データを見ても、特に若年層の新聞閲読率・閲読時間の低下は顕著であり、販売部数もゆるやかな減少が続いています。携帯電話(スマホ)、インターネットプロバイダー、有料テレビ等々、有料情報の選択肢が以前とは比べものにならないほど増えており、新聞購読料にまでお金が回らないということなのかもしれません。
しかし、新聞メディアの影響力が依然として強大であることは否定できません。部数が減少しているとはいえ、依然として毎日数千万部が家庭に届く日本の新聞普及率は、あらゆる国の中でもトップクラスの水準です。
また、新聞記事の内容は社会におけるさまざまな議論を生み、ときには生活者ひとりひとりを動かす力を持っていますが、最近ではそれがさらにソーシャルメディアによって爆発的に拡散していくという可能性も持っています。新聞広告においても、ソーシャルメディアとの相乗効果によって、社会現象ともいうべき大きな反響を生み出した事例が多数存在します。
新聞のこうした大きな影響力をあらためて訴求すべく、いま新聞界は一丸となって、新聞メディアと生活者の接点を拡大するためのさまざまなチャレンジを行っています。
新聞広告の効果、可視化に向けた取り組み進む
まず、電子新聞を中心としたデジタルメディアについては各新聞社とも取り組みを強化、PCだけでなくスマートフォン、タブレットなどデバイスの多様化にも対応したサービスを拡充しており、登録会員数も増加を続けています。
また、学生・児童向けの新聞を創刊あるいはリニューアルする動きや、女性向けのページを拡充する動きも目立ってきています。新聞読者の予備軍というだけでなく、活字文化の担い手を育てるという意味でも、これらの試みは非常に意義あるものといえます。
このほか、1部ごとに違う内容を刷り分けられる「ハイブリッド印刷」を一部の新聞社が導入するなど、インフラの革新についてもチャレンジが続けられています。
新聞広告の効果をより可視化し、広告計画に寄与することを目的として、2011年4月にスタートしたのが、新聞広告共通調査プラットフォーム「J-MONITOR(ジェイ・モニター)」です。それまでは新聞各社がそれぞれ独自の方法で反響調査を実施していましたが、これを共通プラットフォーム化したことで、各紙間の比較も可能になりました。中央紙5紙でスタートしましたが、その後参加新聞社はブロック紙・地方紙・スポーツ紙にまで拡大し、2015年4月現在の参加社は18社19紙となっています。
『広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015』に記載がある通り、新聞メディアの大きな強みの一つは、情報が信頼でき、生活者に深く根づいたメディアである、ということだと思います。この強みは今後も当面は揺らぐことがないでしょう。私たちはこうした新聞メディアの強みを生かすと同時に、新聞広告紙面だけではない、新聞社が持つ総合力(デジタル、事業、販売など)をフルに活用した立体的なプロモーションを提案していきたいと考えています。
原口 誠
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 新聞局業務開発推進部メディアプロデューサー
1986年博報堂入社。新聞局配属後、メディアバイイング、メディアプランニング、メディアリサーチなどのほか、数々のメディアプランニングシステムの開発にも従事。デジタルメディア部門などを経て、2013年より現職。
広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015
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