現地時間21日にスタートする「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」。それに先立つ19~20日、昨年新設されたアワード「Lions Health(ライオンズヘルス)」の審査と受賞作品の発表が行われた。
医療・ヘルスケア領域のコミュニケーションにおけるクリエイティビティを顕彰する同賞。エントリーおよび審査は「ヘルス&ウェルネス」「ファーマ」の2部門に分けて行われる。
今年は、ヘルス&ウェルネス部門に1430点(昨年は906点)、ファーマ部門に432点(昨年は517点)がエントリーし、それぞれ61点・25点、計86作品が受賞を果たした。
ヘルス&ウェルネス部門のグランプリには選ばれたのは、プロクター・アンド・ギャンブルの生理用品ブランド・Alwaysのキャンペーン「Intimate Words」(レオ・バーネット メキシコ)。メキシコの首都・メキシコシティにほど近いオアハカという地域の女性たちに、現地の死因として急増している子宮頸がんを啓発するためのプロジェクトだ。
啓発にあたって最も大きな問題は、文化的なタブーにより、この地に女性生殖器を表す言葉が存在しないということ。そのため、彼女たちは、がんに冒された箇所や、自分の身体の症状を説明することができず、これまで適切な治療を受けることができなかったのだ。
そこで同プロジェクトでは、社会学者、言語学者、医師らの協力の下、女性たちとともに新しい言葉をつくり、それを1冊の本に収録。現地の女性たちに、タブーを打ち破り、自身の身体の症状を説明できるようにしようと呼びかけた。
審査員長を務めた英LanglandのECD・Andrew Spurgeon氏は「このキャンペーンは、女性たちが自らの健康を守るために必要なサポートを得るための“声”を提供した。このアイデアの素晴らしいところは、あらゆる年代の女性に適用できるということ。そして、次世代へと引き継がれていくものであることだ。Alwaysの、世界中の女性に対するコミットメントを体現することに成功している。人の人生を変えるクリエイティビティの創出を追求するブランドとしての、秀逸な事例と言えるだろう」とコメントしている。
昨年は該当作品なしだったファーマ部門のグランプリには、アストラゼネカの「Take it from a fish」(DigitasLBI NY)が選ばれた。これは、中性脂肪が身体に及ぼす悪影響を啓発することを目的に、公式サイトやYouTube、SNSとオンラインで展開されたソーシャルキャンペーン。
全11話からなるムービーでは、2匹の魚のユニークかつちょっとシュールな掛け合いを通じて、中性脂肪について知ることができる。(魚をキャラクターに起用しているのは、中性脂肪値を下げるのに効果的とされる成分「DHA」が、魚に多く含まれるためと思われる)
また、ゴールドを受賞した作品の中から選ばれる「Grand Prix for Good」には、英国のスポーツ促進団体・Sport Englandの「This Girl Can」(FCB INFERNO)が選ばれた。
「多くの女性が、他人の目を気にするあまり、スポーツをすることに臆病になっている」という調査結果を受け、「もっと女性たちをアクティブにする」ことを目的に制作された動画。年齢も体型もバラバラの女性たちが、ジョギング、水泳、ボクシング、サッカー、スカッシュとさまざまなスポーツに打ち込む姿が写し出される。
動画は現在までに、830万回以上再生されている。
さらに今年は、「the Healthcare Agency of the Year」 「the Healthcare Network of the Year」を新設。
すべてのエントリー作品について、獲得ポイント数が最も高かったエージェンシーおよびエージェンシーネットワークを表彰するもので、前者にはLangland(英国)、CDM(英国)、Medulla(インド)が、後者にはCDM Group(英国)、McCann Health、Publicis Healthcare Communications Groupがそれぞれ選ばれた。
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