続けて、ダイレクト部門。日本人審査員のADK 原田太一氏によると、審査では「ユーザーと何らかのコネクションがあり、こちらからアクセス可能なもの、かつ商品に落ちているもの」をダイレクトとして進められたとのこと。
グランプリは、2015年のスーパーボウルで物議を醸した、「史上最強の乗っ取りCM」。他の自動車メーカーのCMが流れている最中にハッシュタグをつけてツイートすると、キャンペーンへの応募になり、1名にVolvo XC60が当たるというものです。
審査委員長のジュディー・ジョン氏(レオバーネット カナダ)が「New innovation to car advertising(車の広告に革新をもたらした)」コメントしていましたが、その言葉通り、スーパーボウルCMの形を完全に壊したアイデアの面白さが評価されました。
VOLVO「Interception」(Grey New York)
実は、このグランプリと真っぷたつに票を割って争ったのが、フランスのポルノスタジオMARC DORCELによる「#HANDSOFF」。
特設サイトには同社制作のポルノフィルムが並んでおり、好きなものを選んで見られるのですが、見続けるには一つ条件が。実はこの映像、キーボードから手を離すとブラックアウトしてしまうのです。
普通この手のフィルムを見るときには手はキーボードには乗っていないので(笑)、飢餓感をあおって、買って見てちょうだい、ということですね。
余談ですが、最終決戦投票では女性審査員が全員こちらに挙手したそうです。女性の方が、後ろめたさがないので堂々手を挙げられる、ということでしょうか(笑)。
贈賞式会場でもどっかんどっかん沸いていました。
MARC DORCEL「#HANDSOFF」(MARCEL Paris)
最終的には、「とにかくアイデアの面白さで評価した」という原田さんの言葉通り、ダイレクトは勢いがあって面白い!と思える受賞作が多いです。ぜひチェックしてみてください。
なお、残念ですが、日本の受賞作はありませんでした。
続けて、モバイル部門。グランプリは、グーグルの制作したGoogle「Cardboard」です。ダンボール製で簡単に組み立てられ、モバイルを差しこんで使用する、バーチャルリアリティ体験用ヘッドセットです(簡易版オキュラスリフトのようなもの)。
「difference level of experience(体験の新しい次元)」を提供するツールであり、様々な企業がVRに活用することで本当のエンゲージメントをユーザーとの間に築く手助けをしている、と審査委員長のジョアンナ・モンテイロ氏(FCB ブラジル)はその評価ポイントについて話しました。
日本人審査委員の掘宏史氏によれば、「Cardboard」の受賞のポイントはもう一つ、「VRを民主化するパッケージを作った」という点にもあるとのこと。「イノベーションではないが、エヴォリューション」という普及の実績が評価されての受賞でした。
ゴールドからも1点紹介します。
「CLEVER BUOY(賢いブイ)」と名付けられたこちらの施策は、シドニーのTELECOMS NETWORK(M&C SAATCHI Sydney)が提供したもので、サメによる海水浴客の被害を防ぐために作られたもの。海に設置されたブイにセンサーが仕込まれており、サメが近づいてきたことを探知すると、ビーチにいる人たちのケータイにサメ警報が届きます。
モバイル部門を振り返り、掘氏は「モバイル=コネクタビリティを最大限に生かしたものが評価された。IoTが注目されていますが、デバイスを一から開発するよりもモバイルを使った方が今はまだ早い」と言います。
日本からの応募はキャンペーンの一部として作られているものが多く、プラットフォームという文脈では審査に残ることが難しかったとのことです。
そんな中、日本の受賞作は1点。ブロンズ受賞のSANKYO フィーバー涼宮ハルヒの憂鬱「Haruhi Hunting」(PARTY)です。グランプリとは形は違いますが、ここからも「モバイルを使って、新しいコネクションを生み出す」というテーマを見つけることができます。
最後に、プレス部門です。
グランプリは、ブレノスアイレスの公共自転車の利用サービスが24時間対応を始めたことを告知するシリーズ広告です。24時間いつでも走れる、ということで走り続けざるを得ない状況の自転車が、動物や赤ちゃんに擬人化(?)されて表現されています。
The Buenos Aires Public Bike System「Dog」「Baby」「Squirrel」「Moths」(The Community / La Comunidad Miami)
そして、今年初めての贈賞式!私はカンヌの贈賞式自体初めての参加ですが、華やかですね。今年はステージの上部まで広い面積をプロジェクションマッピングで覆ったデザイン。よく「カンヌには魔物が棲んでいる」(=カンヌに行くと自分も表彰台に上りたい、という気持ちに取り憑かれてしまう)という言葉を聞きますが、なるほどこういうことかと納得しました。
プレスはとにかく南米が強い(ヤングカンヌもしかり)。モバイルはゴールド8本中3本をR/GAが受賞。その強さが目立ちました。
明日は、アウトドア部門、クリエイティブ&エフェクティブネス部門、PR部門、メディア部門の受賞結果をレポートします。
勝率の高いプレイヤーほどアイデアの着想をカンヌから得ている!
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http://www.sendenkaigi.com/class/detail/latest_cannes.php