体の一部を、OFFにしよう。

目をOFFにする時間。

先輩からの紹介で、
日本ブラインドサッカー協会の事務局長である
松崎英吾さんと出会いました。
ブラインドサッカーとはアイマスクを装着し、
鈴の入ったボールを使ってプレイする
いわゆる障がい者スポーツです。

松崎さんはこのブラインドサッカーの
小学生向け体験授業「スポ育」を
年間で400回以上行うなど、
日々イノベーティブに活躍されている方です。
物は試しと僕も一度、一般向け体験会に参加してみました。
衝撃的な時間でした。
アイマスクをつけながら体験するので、
初めはどうしても不安です。
右往左往します。声が震えます。
でも、次第に暗闇に慣れてきます。
自分が暗闇と同化し、宇宙の一部になる感覚が生じます。
不思議なことに、心身から余計な力が抜けていきます。
そして、普段よりも耳が鋭敏になります。
遠くで体育館の床がすれる音。だれかが漏らした小さな声。
何階層もの音がごく自然に耳に入ってきます。
また、暗闇とは基本的には「ピンチ状態」なので
他者と力を合わせるしか生きる術がありません。
そのために積極的に声がけする必要があります。
「私はここにいます」「私はどこどこに移動します」
「今からボールを蹴ります」
目を閉じていなければ言わないことも、逐一声に出します。
そうしないと、コミュニケーションが成立しないからです。
体験を終えて気づいたことがあります。
いかに普段の私がOVER ONで、
自分や他者ときちんと対峙していなかったということ。
そして、目を閉じた暗闇の世界が、
自分を成長させる絶好の状況であること。

この日のファシリテーターは、
ブラインドサッカー強化指定選手のハジでした。
彼は中途失明者です。
彼と接する中で、僕はふと思いました。
視覚障がい者は、目に障害がある人たちではない。
目をOFFにしている人たちだ。
目をOFFにしているから、
スマホやPCを何度も見るリズムとは無縁。
どうすれば自分の気持ちが伝わるか、言葉を選ぶ。
相手の言葉も、聞き漏らすまいと耳を澄ます。
心と心で向き合う。
僕ら目が見えている晴眼者よりも
遥かにコミュニケーション能力が高い人たちです。
何故でしょうか。
目をOFFにすることによって、
OVER ON状態から逃れているからだと思います。
視覚障がい者は、
ひょっとしたら今の時代、
だれよりも人間らしい人間なのかもしれない。
世間が思う「可哀相な人」ではないかもしれない。
衝撃を受けました。
しかも誰でも、その状態に持っていくことができます。
目をOFFにするというシンプルな方法で。
これなら0円で0秒で、いつでもどこでもできます。
革命的です。
後日僕は松崎さんに対して、
ブラインドサッカー一般体験プログラムを
「目をOFFにする時間」と位置づける提案をしました。
名前は”OFF T!ME”。

今では月に2〜4回ほど開催していますが、
毎回大勢の人でにぎわう人気プログラムとなっています。
是非一度体験してみませんか?

次ページ 「スポーツとOFFの深い関係性。」へ続く

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澤田 智洋(電通 コピーライター/プロデューサー)
澤田 智洋(電通 コピーライター/プロデューサー)

2004年電通入社。映画『ダークナイト・ライジングの』「伝説が、壮絶に、終わる。」等のコピーを手掛けながら、多岐に渡るビジネスをプロデュースしている。世界ゆるスポーツ協会代表。日本バブルサッカー協会理事長。スポリューションメンバー。義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」プロデューサー。視覚障がい者用のロボットを開発する「MAGIC STICK PROJECT」プロデューサー。日本ブラインドサッカー協会のコミュケーションプランナー。R25でマンガ「キメゾー」連載中。口説き文句研究家。著書「ダメ社員でもいいじゃない。」

澤田 智洋(電通 コピーライター/プロデューサー)

2004年電通入社。映画『ダークナイト・ライジングの』「伝説が、壮絶に、終わる。」等のコピーを手掛けながら、多岐に渡るビジネスをプロデュースしている。世界ゆるスポーツ協会代表。日本バブルサッカー協会理事長。スポリューションメンバー。義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」プロデューサー。視覚障がい者用のロボットを開発する「MAGIC STICK PROJECT」プロデューサー。日本ブラインドサッカー協会のコミュケーションプランナー。R25でマンガ「キメゾー」連載中。口説き文句研究家。著書「ダメ社員でもいいじゃない。」

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