CMには作り手の色が出る
澤本:常に多田さんがやっていることは「多田色」がすごく強かったし、これ見たら「多田さんだろうな」と思うこともある。多田さんは作家性を特に求めていないかもしれないけど、「多田さんがやったんだろうな」というのは何となくわかったりします。
多田:そういうつもりはないんだけどね。そういう風に見られたいともそんなに思わないし、バレないで「あ、そうだったんだ」のほうがちょっと面白いかなというのはあるけど。
中村:「え、意外! これ多田さんなんだ」というほうが。
多田:そうだよね。わかるということは想定内ということ。想定外のほうが面白い。でも、誰でも出るんだと思う。俺だけじゃなくて、権八とか澤本も、やっぱり好きなものというか、これだと思ってつくったものには出るんだと思うんだよね。不思議だよね。
澤本:なぜでしょうね?
多田:岡潔さんという数学者が「数学も最後は情緒だ」と言ってるもんね。
一同:えーっ!?
多田:「1」があるかないかということも、誰も「1」の存在を理論上では証明できないと。だけど、それは人間の情緒の世界を無視しているからだと、その数学者が言ってるんです。CMも最終的にはデジタルの信号になってるのに、出るんじゃない、その情緒みたいなものが。「権八がつくりました」と出るわけではないし。
中村:クレジットは出ませんしね。
多田:だけど、きっと出るんだよね。理屈的には出るはずのないものが、やっぱりみんな、なんかそうだと思ったというのが。それが面白いなと思う。それで、「多田色」みたいなことを言われるんだったら、それはそれでいいかなという気はする。権八なんて、アレだよ・・・「ロマンチックバカ」みたいなところがあるじゃない。
一同:笑
多田:そういう感じがいいんだろうなと思う。「バカだけでなし、ロマンチックだけでなし」みたいなね。もっとロマンチックにして、その中に最後、バカがあって泣くみたいな。だから、クドカン(宮藤官九郎)に近いというか。あのCMなんか近いよ。
権八:宮崎あおいちゃんのearth music & ecologyですか?
多田:そうそう。なんかロマンチックというか、その中にちょっとバカも入れたりしてるよね。すごく好きだけどね、あのシリーズ、ずっと。
権八:本当ですか? ありがとうございます。
多田:あのへんの中にあるような気がするけどね。権八の何かが。だからこの先もっとすごく権八らしくていいCMが生まれると思う。
権八:ありがとうございます。先生に教わる生徒みたい(笑)。
澤本:今度から最初の紹介は「ロマンチックバカの権八です」と。せっかくだからね。
権八:そうですね。ちょっと前までは「一生高校生」(笑)。それは占い師のゲッターズ飯田さんに言われたんですよ。「あなたは一生高校生です」と。
多田:同じこと言ってるね。それ長所だよ。
澤本:「一生高校生」を言い換えると、「ロマンチックバカ」に・・・。「ロマンチックバカ」を職種にすればいいじゃない。
権八:肩書きを? CMプランナーをやめて(笑)?
中村:はい、いつまでもお話をしていたいところですが、そろそろお時間です。多田さん、改めて今日はありがとうございました。
澤本:こういう回はいいね。今回はもっとしゃべりたかったぐらい。わざわざ来てくれて、ありがとうございました。
多田:いえいえ、また呼んでください・・・でも、もう2回目は無理かもしれない。
一同:笑
多田:テンションがね、飽きちゃうんだよね(笑)。
中村:番組へのご意見やご感想、お悩みなどはドシドシsuguowa@tfm.co.jpまでお願いします!
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構成・文 廣田喜昭