パーセプションギャップを解消するためには時間をかけた啓蒙活動
アメリカン・エキスプレス・インターナショナルの困ったときの対応がその後の拡散につながるという話をはじめ、各社とも顧客接点における「体験」を非常に重視していることがわかった。石橋氏がそのためのコンサルタント教育の重要性に触れ、店頭で体験を作るコンサルタントのモチベーションとクオリティを維持することに取り組んでいると話したように、お客さまと接する社員の重要性が見えてきた。
同時に、Eコマースが拡大していく市場で、「コンサルタント不在のウェブ上でどう体験をつくるか、試行錯誤しているところ」(石橋氏)と今後の課題にも触れた。
インターネットやソーシャルメディアの発達によって、「口コミ」はポジティブな情報も拡散するが、一方で、ネガティブな情報の拡散にも効果を発揮する。こうしたネガティブ情報の拡散によるパーセプションギャップへの対策を中島氏は「焦りは禁物」と話し、時間をかけて啓蒙していく根気の必要性を説いた。西村氏も同様に、単にネガティブ情報を否定する打ち出しをするよりも、「新聞、テレビなどを統合して、ポジティブな情報を出していくことがポイントとなる」と話した。
クロスブランドのコラボレーションに必要なことは「ビジョンの共有」
これまでの研究会からすでにエクスペディアとネスレ日本のコラボレーションが生まれている。また、4月28日に行われた「Midyear Party」でも特別プログラムとして、参加企業同士のコラボレーションのアイデアを考える企画を実施し、各社がそれぞれの企業の持ち味を組み合わせた案を考える良い機会になった。
加藤氏は、研究会やこうした企画から「新しいビジネスの可能性がクラブから生まれるのではないかと考えている」と話し、今回の研究会では、参加各社にクロスブランドのコラボレーションの相手として想定する企業を考えてもらった。
石橋氏は、現状女性がメインとなっている顧客層を男性にも拡大したいという意図から、自動車メーカーなど比較的男性を中心顧客層とした企業との取り組みを挙げた。
西村氏は、健康や美容を意識している点をコラボレーション先に求めた。生命保険会社やスポーツブランドなどの名前を挙げた。
「健康」や「インバウンド」、「シニア」といったテーマは、多くの企業が訴求したいところでもある。加藤氏は、コラボレーションには商品やメディア、顧客層などの共通点も必要だが、企業同士が持っているビジョンが一致することが、短期間でのコラボレーション実現につながりやすいことを、これまでの研究会からの発見として紹介し、コラボレーション相手を考える際のヒントを提供した。
非日常での体験を提供する場として想定される航空、鉄道会社をコラボレーション相手として挙げた鈴木氏。加えて、プレミアムウイスキー販売を考えた際に、顧客の嗜好や購買履歴のデータを持っているカード会社は効果的なコラボレーションができるのではないかと話した。
中島氏も、会員誌などで「特別な情報」として発信することは喜ばれやすいと応じた。
今回、最も具体化のイメージが出たのは、花里氏と中島氏のやりとりだ。花里氏は、コラボレーション先の企業として具体的な名前を挙げず、この研究会のような集まりでの会話からアイデアを見つけたいと話した。その一例として、花里氏も使用しているセレクトショップ「BEAMS」モデルのVAIOが実現した際のエピソードを話した。
VAIOロゴが入る部分にBEAMSロゴを入れ、トラックパッドにBEAMSのコーポレートカラーをあしらったものを見た中島氏は「私たちのお客さまにはロゴが入ったものが好まれる傾向が強い」と反応。ポイントプログラムの交換アイテムでもアメリカン・エキスプレスのロゴが入った傘やスーツケースが人気であることに触れた。
同社ではエクスポータブル、インポータブルという考え方があり、世界各国の取り組みを発信し、良い物を取り入れる仕組みがあり、こうしたコラボレーションがバイラルを起こして、海外へ波及していくのも面白いのではと話した。花里氏はBAMSモデルでも実行した立ち上げ画面のロゴ変更や、企業名の刻印やデザインの刻印、色入れができると提案し、「まさにこういう会話でコラボレーションを生みだしたかった」と話した。
感動体験の提供が「ファン化」につながる
加藤氏は、この日の研究会を振り返り各社のカスタマージャーニーに共通するポイントを「いかに感動体験を提供して、お客さまの心に火をつけるか」だとした。
カードを紛失した際の、コールセンターの担当者が親身に対応し、すぐに再発行されるという体験や、スキンケア商品を購入するときに、コンサルタントがお客さまの肌を理解し、その人に合った商品を紹介するといった顧客接点でお客さまの感動につながるような体験が、「ファン化」の大きなきっかけとなる。
ユーザーであるクリエイターを講師に招いた講演会の開催や、イベントでハイボールを飲んでもらう、あるいは工場見学といった体験の場は、お客さまの気持ちに火をつける機会となる。
そうした体験がジャーニーの次のステップへと進むことになるため、「感動体験を生みだして、お客さまの気持ちに火をつける(イグナイト)ことが重要だと浮き彫りになった」と話し、第7回の研究会を締めくくった。
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