読者との関係性は出版社の資産
生活者を取り巻くメディア環境は変化し続けています。雑誌閲読者が約5割と昔に比べて減少し、販売部数が低下、雑誌広告費が減少していますが、電子雑誌の発行誌数や部数が増えるなど、新たな兆しもあります。
そうした環境において、生活者に対して価値のあるコンテンツを提供できるというのは、雑誌にとって普遍の強みなのではないでしょうか。出版社というのは、雑誌というメディアをつくっているだけではなく、コンテンツそのものをつくりだしている、「コンテンツホルダー」なのです。
雑誌は、常に時代の最先端を行き、流行を創ってきたメディアです。流行語・トレンド・ヒット商品を生み出していますし、新しいライフスタイルのあり方も提案しています。また、雑誌が育ててきたモデルが、女優・モデル・タレントとして人気を生み、活躍していることからもわかります。
何より、出版社は読者との関係性・絆を築いてきたからこそ、読者ひいては生活者のニーズを把握し、興味深いコンテンツをつくることができるのです。
また、雑誌は、編集と一緒に広告をつくる「編集タイアップ」という手法を先駆けて取り組んでいるメディアで、編集タイアップは、広告主からのニーズも高く、年々増加傾向にあります。
雑誌の体験は生活者に行動を喚起させる力がある
雑誌の編集者は、読者のことを一番知っていて、より読者に強くアピールするコンテンツ制作が可能です。だからこそ読者は、その雑誌で紹介された商品やライフスタイルに影響を受け、興味関心を持ち、もっと知りたいという情報欲求行動や購買行動を起こします。メディア環境研究所「メディア体験調査」においても、雑誌の体験には、生活者に行動を喚起させるという特徴が見られます。
■雑誌の体験イメージ
現在の雑誌ビジネスは、紙という枠組みだけに捉われず、編集力・ブランド力・キャスティング力など、出版社の持つプロパティ(資産)を活用するビジネスに広いがっています。
Webサイト制作・コンテンツ2次使用をはじめ、雑誌ブランドロゴ使用によるカタログ・POP制作、雑誌ブランドとのコラボレーション商品開発、タレント・モデルなどのキャスティング、人気コミックキャラクターを活用した広告コンテンツづくり、読者コミュニティ活用など、非常に多岐にわたっています。
特に、出版社Webサイトの制作はもちろん、広告主Webサイト制作を請け負うなど、出版社の編集力を活かしたコンテンツ開発・提供も積極的に行われています。出版社は、コンテンツをつくりだすと共に、タッチポイントを拡散していくことで、生活者に価値のある情報を発信し続けているのです。
このように、出版社のコンテンツ開発・提供が進化していくことで、雑誌ビジネスの可能性は、さらに広がっていくのではないかと思います。
崎浜 由佳
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 雑誌局業務推進部
1992年博報堂入社。雑誌局、メディアマーケティング局などを経て、メディアのプラニング、マーケティング、リサーチ、バイイングなど、PDCA全ての業務に携わる。2013年4月より現職。
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