「For a better world」の受賞がますます目立つ−−JWT 曽原剛カンヌレポート

【執筆】
JWTジャパン エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター 曽原剛

続々と各賞が発表されるカンヌ。前半戦で感じたことについて、JWTジャパンでエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター(ECD)を務める曽原剛氏に聞いた。

1.For a better world

受賞作品を見れば一目瞭然ではあるが、今年も(例年以上に)、全カテゴリーをまたいで、世界がまたはある地域が抱える社会的な問題を解決しようとする仕事の受賞が目立った。CSRからCSV、ソーシャルグッドなど我々も毎日耳にしていることではあるが、その中で「For a better world」という言葉が印象的だった。また、ユニリーバ社主催のセミナーで話されていた「Marketing for people」という話は非常にシンプルにこのテーマをまとめていた。

2.Behaving is more important than telling

プロダクトアイデア、サービスアイデアそしてビジネスアイデア。そのブランドが持つエッセンシャルな価値や信念を実現していくために、もはやコミュニケーションアイデアだけでは足りないということが改めてはっきりしたカンヌだと思う。Volvoの「ライフペイント」、ロレアルの「Makeup Genius」、Equinoxの「The pursuit by Equinox」。その他にもたくさんの受賞作が、Behaviorを創造することがいかに大事かを物語っている。

3.Inspiring point of view / Human truth x Brand truth

南米の強さが目立ってはいたが、一方で、Alwaysの「Like a girl」をはじめとした、北米の作品の深さと大きさから、マーケティング先進国の底力を見た気がする。人間性とブランド価値、人間性とテクノロジーの高次元での融合。インサイトという言葉が浅く感じてしまうほどの深いメッセージ性。この部分は日本をはじめとしたアジアがキャッチアップする必要を強く感じる。

4.Projects than campaigns

大きなブランドのために大きなエージェンシーが行った大きな広告キャンペーンも当然受賞しているが、大きなブランドのために比較的小さなクリエイティブハウスが行ったプロジェクトベースの先進的な仕事の受賞が非常に多くなっている。ここ数年、欧米ではプロジェクトベースでの実験的な試みが活発になってきたこともあり、それが色濃く反映された結果だと思う。二つ目のポイントの「Behaviorを創造することの大切さ」とも強く関係するが、この流れは世界的にどんどん進んでいくであろう。

曽原剛(そはら・ごう)
JWTジャパン エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター

1999年博報堂入社。博報堂コピーライターとして7年間、主要クライアントであるホンダ、キリン、ソニー、NTTドコモを担当。2006年にロサンゼルスのTBWA/Chiat/Dayに移籍し、Apple、日産及びオーディオ機器ブランドであるJBLのクリエイティブを手掛ける。その後2007年に日本に帰国し、東京と北京にてTBWA/Media Arts Labを立ち上げ、Appleのリージョナルクリエイティブディレクターとして中国、日本、韓国、オーストラリア向けのキャンペーンを開発するとともに、グローバルクリエイティブチームの主要メンバーとしてグローバルキャンペーン開発にも携わる。2010年に再び米国に戻り、ロスのTBWA/Media Arts Labにてクリエイティブディレクターとして従事。その後2014年にはグループ・クリエイティブディレクターとして現在に至るまでAppleのクリエイティブ開発を担当し続けている。 インテグレーションに強いクリエイターとして数々のイノベーティブなプロジェクトを生み出してきた曽原氏の作品には ‘Get a Mac’, ‘iPod Gamma’ ‘iPod Stacks’ ‘iPod Grid’ ‘iPhone Demos campaign’ ‘iPhone FaceTime campaign’ 及び ‘iPad Launch/Family campaigns’ 等も含まれる。また、数々の国際的なクリエイティブ賞も受賞しており、2007年から2012年の間に多くのカンヌライオン及びエフィー賞を獲得。
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