【執筆】
ヤフー株式会社 ブランドマネジメント室室長 内田伸哉
プロモーションと文化は「イナズマ」と「太陽」だ。
ソーシャルで「あるドレス」が金と白に見えるか、黒と青に見えるか、、、という投稿が少し前にバイラルしました。最高1時間で30万ツイートもされたそうです。一方で日々の一般的な「ファッション」のようなネタは1日あたり定常的に200万ツイートされています。
ツイッターさんはカンヌ講演で上記の例を「イナズマ」と「太陽」と例えていました。一見目立つのはドレスのような「イナズマ」ですがネットでビジネスを支えるのは、日々定常的につぶやかれている「太陽」的な日常ファッショントークであると。
「太陽」にインパクトを与える「フレア探し」
ヤフージャパンも日本では「太陽」的な使われ方をしています。しかし、ビジネスとして成長しつづけるためには「イナズマ」を落とし、「太陽」をより大きくしていく必要があります。
いや、「イナズマ」では太陽に影響を与えることができないのでもっと大規模な「フレア」のようなクリエイティビティ溢れた施策が必要なのです。
我々メディアはまさにそんな「ゲームチェンジ」を起こしビジネスインパクトをあたえる「フレア」を求めてカンヌの作品を眺めています。
フレアの集合体 カンヌ
カンヌではゲームチェンジャーという言葉がよく使われます。新しい文化や。今ある文化を変えることはなかなか難しいことです。しかし、そんな文化にインパクトを与えるべく挑戦しつづける「フレア」的な要素を感じた作品をいくつかご紹介します。
Proud whopper / Burger King
バーガーキングは We are all the same insideというメッセージと共に新しい価値観や文化を創造する、というビッグゲームに挑戦をしています。日常的に多くの人の食をささえているブランドであり、同時にメディアでもあるからこそ言えるビッグワードなプロモーションです。
ワールドギャラリー / Apple
今回のカンヌではテクニカルなものや技術的なものはどんどんと無くなっている傾向がみられます。アップルはさすが、というかプロダクトの機能から全く逃げない強いプロモーションを打ち続けています。ワールドギャラリーはiPhoneで撮影した写真を屋外メディアで展開し世界を美術館に見立てるというもの。
シンプルで強いアイデアを愚直やるきることこそゲームチェンジャーができる最高の手段だ、ということをみせてくれる作品です。
Great Chinese names for Great Britain / 英国政府観光庁
中国人観光客を増やすためにイギリスの有名な観光地に新しい「中国名称」をつける、というプロモーション。「名前」というすべての人間が意識する要素を活用し、「中国から英国へ旅行する」という文化醸成に一石を投じたアイデア。
脱スキャム
少し前のカンヌはスキャム的な作品が散乱していましたが、今回カンヌに来て思ったのはそういった作品が以前よりも減りはじめている、という印象です。たとえばアイスバケツチャレンジやHAPPYのような世の中に絶大なインパクトを与えたクリエイションが応募されているのもその証拠になります。
本当に文化や世の中を変える可能性のあるクリエイティブが昔より一層集まってきている。それがカンヌなのです。
私たちメディア企業は日々多くのユーザーに日常を提供しています。そんな日常に波乱を起こし、人々を喚起させ、新しい感情を生み出す可能性を感じるアイデアを今年のカンヌではたくさん感じたカンヌ前半戦でした。
内田伸哉(しんや・うちだ)
ヤフー株式会社 ブランドマネジメント室室長
慶應義塾大学院理工学研究科卒 株式会社電通を経て現在ヤフー株式会社 ブランドマネジメント室室長。 事業立案、広報戦略、ビジネス設計といった上層概念の構築から企画、デザイン、クリエーティブといったアウ トプットまで一貫したコンサルティング・実施を行う。2000年にプロデューサー兼マジシャンとして様々なイベン トや舞台をプロデュース、2010年に発表したiPad magicはCNNやThe Wall Street Journalをはじめ150以上のメ ディアに掲載。以後、TEDx、Google、SXSW、日経新聞セミナー、慶應義塾大学など国内外問わず様々な場所 で講演活動を行う。著書にプレゼンのアイデアノート51(東洋経済新報社)、企画に年功序列は存在しない(クロスメディア・パブリッシング)他。文化庁メディア芸術祭文部科学大臣奨励賞/ Cannes Lion/OneShow/TCC新人 賞/朝日広告賞他多数受賞。
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