“笑える”カンヌ受賞作!−−博報堂ケトル 橋田和明 カンヌレポート1

【執筆】
博報堂ケトル クリエイティブディレクター 橋田和明

ボンジュール!博報堂ケトルの橋田です。カンヌに参加するのは7回目。現地で体験したことをみなさまにシェアできればと思います。

まだいくつかの部門の発表を残していますが、今年のカンヌは、「Social Good傾向がさらに強くなった」、とみんなが口を揃えて言っています。クリエイティビティは世の中を良くしたり、社会の課題を解決したりするべきである、というテーマに向かってカンヌが進んでいる印象を受けた人が多いのでしょう。

その方向性は個人的には好きだし、広告業界の人間として取り組んで行きたいテーマなのですが、「全部そっちでいいんだっけ?」と抵抗する自分もいたり。

そこで、クリエイティビティのダイバーシティ(多様性)を保つという崇高な目的のために、今回は社会課題解決よりも、絶滅危惧種になりつつある“笑える”受賞作に光を当ててみたいと思います。

これがホントの“ウェットスーツ”

まずは、PR LionsのGold、「True Wetsuits」。

これは、日本のTBWA\HAKUHODOの受賞作。日本の忙しいサラリーマンがサーフィンをあきらめなくてもよくしてくれるのが、このQuick SilverのTrue Wetsuit。そのままです。ウェットスーツなのですが、ビジネススーツなのです。実際そのまま出社するか?なーんてツッコミはナンセンス。

このサーフィン愛を体現した、行き過ぎたおバカな商品化にポイントがあるのです。

※この動画はエントリービデオではありません。

ポルノサイトを無料で見るための、ある条件

次は、Direct LionsのGold、「#Handsoff」。

すみません、ちょっとエロです・・・。ヨーロッパのポルノサイト“Marc Dorcel”のキャンペーン。無料動画サイトを利用している人たちに、月額9.99€のMarc Dorcelのハイクオリティなストリーミング再生を体験させるためにやったことなのですが、ものすごく頭が良いです。

このサイトのポルノ動画を無料開放したのですが、閲覧するのに条件が一つだけあるのです。両手をキーボードの上に置いておかなければいけないという・・・。おわかりでしょうか。笑

あの可愛らしい動物が・・・

最後に、Media LionsのGold、「Rabbit Race」。

その名の通り、ウサギのレースです。家電量販店がウサギのレースの生中継番組をつくり、レシートの番号とレース結果が一致すると50%のキャッシュバックがあるというプロモーション。

ここまでやるか?ということを感じさせる本気な製作クオリティとウサギの可愛らしさのギャップが笑えてきます。

以上3つ紹介しましたが、もちろん笑えるだけではなくて、この3作品はきっちりと、美しくブランドの課題を達成していると思います。

「クリエイティビティは社会や文化をよりよくしていくのである」というテーマももちろん大切だと思いますが、まずは世の中の人たちを笑わせたりすることで、人々の記憶にしっかり残すのも、僕たち広告業界の誇れる仕事なのだと思います。

博報堂ケトル クリエイティブディレクター 橋田和明
1980年生まれ。東京大学経済学部卒。2002年博報堂入社し、ストラテジックプランナーに。2006年博報堂ケトル設立とともに同社に。戦略から広告クリエイティブ、PR、イベントなどエグゼキューションまでをプランニングするクリエイティブディレクター。12のカンヌライオンに、4つのアドフェストグランプリ、D&AD、OneShow、NYADCなど受賞多数。

cannes_report


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