続けて、アウトドア部門。グランプリを受賞したのは日本でも掲出されていたiPhone6の広告です。プロの写真家がiPhone6で撮影した美しい風景画像をポスター、雑誌広告、バス広告・巨大ビルボードになどに展開したものです。
審査員の中島和哉氏(ドリル)によれば、「アウトドア部門として意味のあるものを考えよう、見たことがないものを選ぼう」という方針で審査は進められたとのこと。
「これはプレスでいいじゃないか」という応募作がどんどん落ちて行く中、iPhone6の広告は皆が持っているこのケータイでこんないい写真が撮れるのだという気づきを見る人に与えたこと、そして世界をギャラリーにしたスケール感が評価されたそうです。
日本の受賞は、ブロンズが1点で日立市かみね動物園の「ZOO JEANS」(I&S BBDO)。動物園の動物たちの入っている檻の中の遊具(タイヤやポール)にデニム生地を巻きつけ、動物にそれで遊んでもらい、“動物によるダメージ加工”を施して売り出す施策です。
続けて、メディア部門。審査員の多くはメディアエージェンシーというカンヌの中でも特殊な部門です。
グランプリを受賞したのは、Vodafone「Vodafone Red Light Application」(Y&R Team Red Istanbul)。
家庭内暴力が多いトルコで、女性たちが夫に気づかれず外部に助けを求めるためのアプリで、危機に際した女性がスマートフォンを振ると、信頼される友人3名に自動的に助けを求めるメッセージが配信されます。
使っていることが一見わからないように細心の注意が施され、告知は女性トイレの中など女性しか目につかない場所で行われたとか。
トルコでスマホを持つ女性の実に24%がこのアプリをダウンロードしたという結果を出しています。日本人審査員の安藤元博さん(博報堂DYメディアパートナーズ)も、まさにそのリアルに使われているという結果の強さが選出のポイントだったと言っていました。
ところで、安藤さんといえば昨年の宣伝会議のカンヌ特集のインタビューで「データやテクノロジーとクリエイティブの融合がどう語られるのか知りたくて来たが、まだ表現に直結するレベルで語られていることが多かった」と話していました。
安藤さん、今年審査を通じてその印象は変わりましたか?
「このテーマには2つ切り口があると感じました。ひとつは、データを使ったターゲティングに新しいクリエイティブを持ち込もうとするもの。例えば、ゴールド受賞のリターゲティング広告とポストイットを組み合わせた3Mの広告です。『リタゲ広告がうっとおしい』と気持ちをうまく使っていると思います」。
この広告、最初にバナーが表示されたときに、自分の備忘録代わりに何かメッセージを書き込むと、その後リターゲティングでバナーが表示された時に、その時少し未来の自分宛に書き込んだメッセージが表示されるというものです。
リターゲティング広告は、確かに「もう見たよ」「知ってるよ」と感じるものが表示されるイメージがありますが、これは「ありがとう!」という気持ちになりそう。ポストイットという商品にもストレートに結びついていて、うまいです。
「データとクリエイティブの融合にはもう一つ方向性があって、クリエイティブそのものをデータを使ってパーソナライズドするということです。
シルバーのコカ・コーラの『The World’s First Furry Personalaised TV』(チャンネル4のCM中に登場するコカ・コーラのボトルが自分のネームボトルになる)や、ブロンズのTAM航空の『Own Board Magazine』(搭乗客のFacebookから趣味嗜好や関心ごとを判定し、その人にあった話題をピックアップしたオリジナル機内誌を作成する)、などいくつかの新しい試みがありました」。
自分こそ最強のコンテンツということですね。今後も様々なアイデアが出てきそうです。
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