Power = Energy ÷ time
パワーとはエネルギーを時間で割ったものです。例えとして、「太陽」と「落雷」のパワーを比較してみると、太陽は絶え間なく波が続くのに対して、落雷は一瞬でエネルギーが高まり、一瞬で下がる。落雷は、非常に予測困難なもので、コントロールができないものなのです。これは、人のコミュニケーションでも同じことが言えます。
ドレスの色が「青と黒」、または「白と金」に見えるか、撮影された一枚の写真をめぐって、ネット上で物議を醸しました。「#dress」の話題は瞬く間に全世界に拡散し、そして収束したのです。これは、実に「落雷」のエネルギーに似ています。
一方で、一般的な「#fasion」というツイートを計測すると、継続的な波形をつくります。これは、太陽の光のようなものです。
このように社会の人々の話題には波があり、パワーが大きいほど瞬間的に爆発し、予測もコントロールもできません。企業はいかに、太陽の光のような日常的なモーメントと、予測不可能な爆発的なモーメントの両方をとらえ、ユーザーとエンゲージしていくかが求められる時代になっています。
データで何ができるかよりも企業の課題を考える
——マーケターやクリエイターは、どのようにすればデータを効果的に活用できますか。
Twitterでは現在、毎秒6000回のペースでツイート(投稿)が行われています。この莫大なデータをいかにマーケティングに活用するかは、どの企業にとってもチャレンジングな取り組みです。ただ、重要なのはこのデータで何ができるかを考えるよりも、企業の課題が何かを考えることになります。そこで、まず企業とエージェンシーは一緒になって、企業の課題に向き合う必要があります。データを活用した他社のケーススタディを共有し、同じビジョンを描くことが大事になるのです。
——講演のなかで例として挙げていた「落雷(ライトニング・ストライク)」はどうやって予見することができますか。
ライトニング・ストライクは、過去にもスーパーボウルなどのスポーツイベント、有名歌手のコンサート、季節行事など多くの類似事例があります。そうした過去のデータからモデルをつくることで、応用できます。Twitterでは人工知能を活用し、過去のデータを分析し、急な流行のシグナルを予見できるようにしています。当社が保有するデータは、すでに投資会社や朝のニュース番組の制作にも活用されています。
——データを基に価値を創造する人材を育てるために行っていることはありますか。
ツイッターでは1万5000人以上のIBMのコンサルタントを教育し、データを活用できる人材の教育を行っています。また、特定の業界に特化したリサーチ会社と連携し、例えば映画市場においてはキャスト・脚本の決定のために、当社のデータを活用する方法を教えることもしています。
——位置情報テクノロジーに注目しています。活用事例を教えてください。
パナマの現地TV局による、道路改修のための活動があります。未改修道路の多いパナマでは、道路のあちこちにくぼみがあり、スムーズに自動車が通行できる状況ではありませんでした。そこでくぼみにTwitterの機械を設置し、車がその上を通過するたびに位置情報を含んだツイートが配信されるようにしました。その取り組みは、多くのメディアに取り上げられ、パナマ政府を動かし、道路の改修工事を後押しする原動力となりました。
日本においては、「東京2020オリンピック・パラリンピック」に向けて、観光庁とともに「Tourlism Board」を作っています。これは位置情報テクノロジーを活用し、訪日観光客の日本国内におけるトラフィックを調査するものです。計測結果をもとに、交通整備の計画を立てています。
——日本市場をどう見ていますか。
日本における140字は、海外よりも多くの情報が入っている、とてもユニークな市場だと感じています。Twitterは「Live Contents」です。今、どこでどんなことが起きているかを、ハイライトで知ることができるうえに、誰もがコンテンツクリエイターになれます。企業はTwitterを通じて、ユーザーの日々のモーメントをつかむことができれば、エンゲージメントを実現する素晴らしい機会になるでしょう。
クリス ムーディー
ツイッター バイス プレジデント、データストラテジ
プレジデントとして、Twitterの持つデータの価値を確保することに責任を持ち、デベロッパー、パートナーおよび顧客とのエコシステムを統括。ツイッター入社以前は、データ分析のGnip社のCEOとしてグロバールにおいて信頼性のあるソーシャルデータのプロバイダーと認知されていた。また、Gnipはフォーチュン500企業のTwitterデータの95%を扱い、40を超える国でサービスを展開していた。
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