米連邦最高裁は6月26日、同性婚は合衆国憲法の下の権利であり、州は同性婚を認めなくてはならないとの判断を下した。これにより、同性婚を禁じる州法はすべて違憲となり、全米で同性婚が合法となる。
同性婚を法制化する動きは近年、欧米を中心に加速している。現在、全世界約20%の国と地域が、同性婚および同性カップルの権利を保障する制度(登録パートナーシップなど)を有すると言われている(NPO団体・EMA日本〈Equal Marriage Alliance〉の発表より)。リサーチ会社 Witech Communicationsが2013年に行った調査によると、LGBT(L:レズビアン、G:ゲイ、B:バイセクシュアル、T:トランスジェンダーなど、性的マイノリティの総称)の購買力は年間8300億ドル、日本円で約104兆円にのぼると言われる。同調査からは、LGBT当人のみならず、その家族・友人も含めた78%の人々が、購買する商品・サービスを“LGBTフレンドリー”なブランドにスイッチする意向を示していることも明らかになり、LGBTを取り巻く世界的な動向が、企業のマーケティング活動に与える影響は少なくないと言える。
日本では現在、同性婚は法的に認められていない。唯一、東京都渋谷区では今年4月、同性カップルを結婚に相当する関係と認める「同性パートナー条例」を全国に先駆けて成立させた。
欧米に比べれば、やや遅れていると言わざるをえないものの、日本においてもLGBTへの認知・理解、対応は着実に進んでいる。こうした中、企業・自治体からの問い合わせやマーケティングに関する相談が増加していることを受け、電通のダイバーシティ課題対応専門組織「電通ダイバーシティ・ラボ」は4月、LGBTを含む性的マイノリティ(LGBT層)に関する調査「LGBT調査2015」を実施した。
同調査では、セクシュアリティを「身体の性別」、「心の性別」(自分は男だ/女だという性自認)、「好きになる相手・恋愛対象の相手の性別」の3つの組み合わせで分類し、独自の「セクシュアリティマップ」を元に、ストレートセクシュアリティ(異性愛者で、身体と心の性別が一致している人。図内②⑩)と答えた人以外をLGBT層と規定。全国の20~59歳の個人6万9989名を対象とした調査の結果、LGBT層に該当する人は7.6%(2012年調査では5.2%)と算出された。
また同調査では、LGBT層の商品・サービス市場規模も算出。一般家庭において消費金額が大きく、かつ消費者の嗜好によって商品選択の変更が比較的容易な22の商品・サービスカテゴリーを選択し、総務省の家計調査と家計消費状況調査のデータを踏まえ、LGBT層の当該カテゴリーにおける消費状況を加味して算定したところ、市場規模は5兆9371万円にのぼった。カテゴリー別の消費市場規模は以下の表のとおり。具体的には、家電・AV機器、家具・インテリア、化粧品、カルチャー活動などへの投資が、一般層より活発であることがわかっている。
さらに、LGBT層当人の周辺の一般層において、LGBT層をサポートする企業の商品・サービスを購買・利用する意向が53%にのぼることも明らかになった。このように、LGBT層を支援・支持することによって生まれる消費を、電通ダイバーシティ・ラボでは「レインボー消費」と命名。さまざまな人間関係が社会に受容されることで生まれる消費の可能性に着目し、今後さらに調査研究を続けていくとしている。
<調査概要>
・対象:【事前スクリーニング調査】20~59歳の個人 6万9989人 【LGBT調査2015】20~59歳の個人900人(LGBT層500人/ストレートセクシュアリティ400人)
・対象エリア:全国
・時期:【事前スクリーニング調査】2015年4月7日~8日 【LGBT調査2015】2015年4月9日~13日
・手法:インターネット調査