優れた企画は日常生活の中から見つかる
中村:嶋さんと権八さんのご関係は?
権八:僕はラジオCMの審査で、昨年のACCが初めてですかね。それまでは「本屋大賞を立ち上げた人」だと一方的に知っていましたけど。嶋さんがいいのは楽しそうなところですよね。自分が好きなことを仕事にしているという感じがすごくあって。
嶋:ありがとうございます。会社に入った頃から、「本当に好きなことしかしてないよね」と怒られていましたね。そんなことないんですけどね。
中村:お仕事のことも聞いてみたいのですが、ちょうどいいお便りが届いています。ラジオネーム「おしべ meets めしべ」さんから。
嶋:この人は完全にラジオのことわかっていますね。いいネーミング。僕が「鴻上尚史のオールナイトニッポン」で好きだった「日米貿易摩擦」というラジオネームに近いセンスです。
ラジオネーム 「おしべ meets めしべ」さん
広告業界に就職したいと思っている大学生です。僕もみなさんのようにクリエイティブの仕事がしたいのですが、コピーやCM、Webなど色々あって、何に自分の適正があるのかわかりません。広告でクリエイティブと名のつく仕事はある程度、発想の仕方は同じなのでしょうか? 教えてください。
嶋:澤本さんも権八さんも洋基くんもそうだと思いますが、「どうやったら発想できるんですか?」「どうやったらアイデアがわくんですか?」と学生さんにしょっちゅう聞かれますよね。でも、企画することはそんなに特別なことをしているわけじゃなくて、「よし、ここから企画タイム」と決めているわけではない。だいたい優れた企画は日常生活の中で見つけたものから始まっていると思うんですよね。
中村:なるほど。
嶋:博報堂は入社すると、必ず伝統的に「タウンウォッチング」という宿題を必ず出されるんですよ。
澤本:タウンウォッチング?
嶋:たとえば、「半蔵門の街を歩いて何か発見してこい」とか、そういうことを必ずやらされます。ある人は「駅前の商店街は必ず果物屋さんから始まる」という発見をしてくるとか。日常の中に「最近こんな人が多いな」と気づくことが企画のきっかけになることが多いと思います。
澤本:そうですね、ゼロからは絶対に出てこない。いつも言っているけど、普段経験していることとか、今まで見てきたものとかをコラージュしてつくっているようなもので。
権八:よく「企画は記憶」と。福里真一先生も『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』にも書いていますが、そういうのはあるんでしょうね。
澤本:リスナーの方、特に若い方は嶋さんにPRの話を聞きたいと思うんですよね。嶋さんは世の中に出ている雑誌をよく知っていて、「この雑誌にはだいたいこういう傾向のことが書いてある」と全部知っているから、パブリシティを出すときに「ここの雑誌がいいんじゃないか」「この編集長がいいんじゃないか」とわかると。
嶋:これまですごい数の記者会見をこなしてきたわけですよ。そうすると、たとえばタレントさんのCM記者会見の現場で、「日テレのこの番組はこういうキャプションをつけるな」「TBSはこうだな」「テレ朝はもしかしたらオンエアないかもしれないな」とだいたい予想できますね。
一同:すごい!
嶋:「ここからここまでが切られて編集されるな」とか。記者会見の台本を見た段階で予想できます。