続けて、そのキリーロバ・ナージャさん(電通)が審査員を務めたサイバー部門に参りましょう。
サイバー部門のグランプリは、Under Armour「Gisele Bundchen- I will what I want」(Droga5 New York)。スーパーモデルのジゼル・ブンチェンを起用したスポーツウェアメーカー アンダーアーマーのCMです。
ジゼルと同社との契約が決まった(それも、彼女のキャリア上史上最高額で)時に、ソーシャルメディア上では賛否両論が渦巻いたのですが、このCMでは批判的コメントの数々をあえて抽出し、ワークアウトする彼女の背景の壁に投影することで、彼女の内面の精神的な戦いを映し出していくというものです。
「サイバー部門ができてから17年。その間にすべてが変わった。その中で何を評価すべきかは難しい問題だった。最終的に私たちが判断基準としたのは、Game Changingなアイデアか? テクノロジーやデータの力で成し遂げているのか? そのカテゴリーでどれだけ力が発揮されたか? の3つ。これらによって、いかにブランドのパワーを高められているかだ」と審査委員長のジーン・リン(Isobar)。
これまでの記者会見でも感じたことですが、従来からのメディア(手法)斬りの部門では、「この部門のアイデンティティは何か?」を見つけ、結論づけることにそれぞれ審査員が苦労している印象があります。Game ChangeやSocial Changeという評価基準がどこの部門でも言われるのも、各メディア固有の評価基準が見つけづらくなっているからでは?
領域横断・統合型の施策がスタンダードになっている中で(ヘルスケアやイノベーションなどメディア以外の切り口も打ち出されていますが)、既存の部門の整理があってもいいのでは?という印象も受けますが、カンヌのビジネス上、部門を減らすということはしないのでしょうね。
テリー・サベージ会長も「必要とする人がいる限り、カテゴリーを減らすことはない」との旨をインタビューで答えています。
話をサイバー部門に戻しましょう。日本人審査員のキリーロバ・ナージャさん(電通)にも話を聞いてみます。
「グランプリのアンダーアーマーは、アメリカで大きな話題になったという影響力の大きさ、クラフトの質の高さ、といった面でほぼすべての項目を満たしていたことで選出につながりました。また、ジゼルとブランドのストーリーのマッチングも素晴らしく、その点でも評価が高かった。ただ、声を大にして言いたいのは、今年のゴールドは全て例年にすればグランプリ級だということです。審査委員長の挙げた3つの視点を総合的にクリアしているものがいくつもありました。その中で日本からの応募作に関しては、1点突破で臨んでいるものが多く、審査のチェック項目を満たせずにショートリストの段階でほぼ残っていない状況でした。ゴールドの中でも、クラフトの一点突破で残ったのはHondaの『The Other Side』くらいです」。
以下、ゴールド受賞作品から。
■HP ブラジル「Print for Help」(FCB Brasil)
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ブラジルは毎年20万人の人が行方不明になる。HPでは、行方不明になった人のポスターを世界中のHPのネットワークにつながったプリンターから出力できるようにすることで、捜索に貢献した。
■Moms Demand Action for Gun Sense in America「Groceries Not Guns」(Grey Canada)
アメリカのスーパーにペットは持ち込めないのに銃を持ち込めるのはなぜ?銃の持ち込みを許可しているスーパーチェーン(Kroger)に抗議し、不買運動を呼びかけるWeb上の署名&ツイートキャンペーン。
■Honda Motor Europe「The Other Side」(Wieden+Kennedy London)
昼と夜、パラレルに2つの物語が進む映像。視聴中に「R」キーを押すと、夜の物語に切り替わるという視聴体験を提供した。
そんな中でも受賞した日本からの応募作はこちら。おめでとうございます。
シルバー
- 日本スポーツ振興センター「Reviving Legends」(電通+電通テック) ※ブロンズ同時受賞
ブロンズ
- スポーツビズ「Fencing Visualised」(電通+ライゾマティクス)
- 筑波大学附属桐が丘特別支援学校「Eye Play the Piano」(博報堂ケトル)
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