「クライテリアは、ソリューションがクリエイティブかどうか、more narrativeか、テクノロジーをしっかり使っているか。同時にブランドにきちんと落ちているかも見ている」とニック。それはまさにR/GAの方法論でもあるのだと思います。R/GAからの受賞作はこちら。
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日本人審査員の中野華奈さん(電通)は、ニックの挙げた審査基準に加えて「ユニークかどうか、この世界にないものかどうかが重視された」と言っていました。それがSXSWなどと違う、ひとつのカンヌらしさと言えそうです。
続けて、クリエイティブデータ部門です。審査委員長のデイビッド・サブレはY&RのグローバルCEO。昨年はクリエイティブエフェクティブネス部門を率いていました。
記念すべき最初の年でしたが…グランプリはなし。「決定したい気持ちはあったが、データカテゴリの応募作は非常に多岐にわたっており、グランプリ選出は見送った。決定は未来の審査員に託したい」。
日本人審査員の皆川治子さん(TBWA HAKUHODO)は、「審査員はデータとクリエイティブ側に分かれており、データとクリエイティブ、両方の視点を満たしていることが入賞の条件で、単にテクノロジードリブンなものは残りませんでした」と言います。
データを使った上で、コアアイデアになれるような強いインサイトを出せたか、クリエイティブの核になれるアイデアを出せたかが評価点。データとインサイト、クリエイティブの橋渡しが弱い物、クリエイティブアウトプットが美しくない物は評価されなかった。とのこと。
来年こそ、これらを満たしたグランプリの出現に期待したいですね。
ゴールド受賞作から1点紹介しましょう。メキシコの赤十字の「SOS SMS」は、急患患者のうち5%が血液型やアレルギーなど、ベーシックな生体情報がわからないために命を落としているという問題を、誰もが持っている携帯電話に注目することで解決につなげる施策。
あらかじめ個人が赤十字のサイトに情報を入力しておくことで、救急隊員が個人の携帯から緊急用のパスワードでこの生体情報を呼び出すことができるというものです。
データと言っても必ずしも膨大なビッグデータ、行動データでなくてもいいのですね。ここにも今回のカンヌに通底する「Social Change」の発想を見ることができます。
クリエイティブデータ部門では、日本からの受賞が4点ありました。国立競技場の「Reviving Legends」はアウトプットの美しさが評価された、という点でまさに納得です。おめでとうございます。
ゴールド
- 日本スポーツ振興センター 国立競技場「Reviving Legends」(電通+ライゾマティクス)
※シルバー、ブロンズ同時受賞
シルバー
- メルセデスベンツ ブランドキャンペーン「Crossword Targeting」(博報堂+博報堂プロダクツ)
カンヌ現地では2人のライオンズイノベーションの審査員、中野華奈さんと皆川治子さんによる対談も行いました。次号のブレーンに収録する予定ですので、ぜひご覧ください。
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