デジタルから始まる新しいサービス設計
安西 新しいチームの名称から、ANAさんのデジタルに対する考えや理想が伝わってきますね。
冨満 以前であれば「デジタル=予約サイト」という捉え方で、チケットの予約機能を開発・改良していけばよかった。しかし、現時点では国内予約の約9割はウェブ販売に移行しており、機能を研ぎ澄ますだけでは、飛躍的な売り上げ増加は見込めません。
一方でお客さまに目を向ければ、たとえばスマートフォンのようにデジタルの進化・拡大は、もはや無視できない状況となっています。
航空会社はお客さまを移動させる役割を果たしますが、その移動中、常にネットにつながるスマートフォンがお客さまの手の中にある状況は、我々にとって、お客さまとのコミュニケーションのあり方を変えたり、新しいサービスを開発する可能性につながっています。
エアラインビジネスにとって、デジタルは親和性が高く、顧客の情報を取得した上であらゆるタッチポイントを通じて接していきます。
デジタルの役割が「予約を受け付ける」ことから、「コミュニケーションを図る」「サービスを提供する」ところに変わってきているのです。
デジタル軸でコミュニケーション戦略を考え、マーケティングの成果につなげていく。それが、デジタルマーケティングチームが今後担っていかなければならない役割なのだと考えています。
安西 お客さまと接点を持てるデジタルチャネルは航空券予約の機能を提供するサイトだけでなく、広がってきている。そこでWEBからデジタルマーケティングへと名称を変えたということですね。
これまでのWEBチームは、あくまで「プリトラベル」が対象だった。しかし冨満さんが指摘されるようにスマートフォンが浸透したことでオントラベル、さらにはアフタートラベルまで、デジタルを介して、いかにお客さまに魅力的なサービスを提供できるかという視点が必要とされています。
西村 私たちは、ANAのサービスは世界一だと思っています。ANAならではのサービス力にデジタルが加わったら、これまで以上に魅力的な体験が提供できるのではないか、と考えています。
冨満 これからはデジタルが起点となる新しいサービス設計の形があってもよいと考えています。サイトにとどまらず、よりお客さまに満足いただける新しいコミュニケーションを実現していきたいですね。
そもそもお客さまはプリトラベルやアフタートラベルを分けて捉えているわけではありません。予約サイト、空港、客室など、縦割りで部門を分けているのは、あくまで企業側の都合です。セクションに関係なく、お客さまと接点のあるそれぞれのポイントを横断的に捉え、考えていくことが今、求められていると思いますし、それを実現に結びつける方法がデジタルなのではないかと考えています。
西村 チーム名称を変えたことで、社内の様々な部門から相談が寄せられる機会も増えました。私たちの部門が社内の各部門をつなげるような役割を果たしていければと考えています。
冨満 デジタルの活用はグローバル市場を狙う上でも不可欠なことです。
現在、当社の航空券販売における国際線の比率は約40%を占め、その比率は年々高まっています。巨大な海外市場が対象では国内のようにマス広告を打って、ブランド認知を高めるというアプローチは使えません。
デジタルを使って、認知を広げ、まずは我々のサイトを訪問してもらう。国内市場、海外市場では異なるデジタルの活用目的を描いています。
意思がなければテクノロジーは使えない
安西 デジタルマーケティングチーム設立に際して、組織として様々なチャレンジがあったと思います。
冨満 私は常に自分たちの仕事の枠組みやプロセスを見直し、進化させていきたいと考えています。今回のチャレンジの中で、特に力を入れたいのがPDCAサイクルに基づく業務プロセスを実行することです。
これまで当社はPDCAで言うと、DOの部分に注力してしまう文化がありました。PDCAの話は、決して目新しいことではありませんし、マーケティング以外の他部門でもよく出てくる話ですが、なかなか定着していない。
だからこそ、業務プロセス改革に本気で取り組んでいくというだけでも大きなチャレンジだと思っています。
ただ、その実行に際して自らの意識改革だけでは限界がある。そこでアドビさんを始めとする社外の人たちの力を借り、さらにテクノロジーの力も駆使して、それを実現させていこうと考えています。
西村 PDCAの中でもDOではなく、PLANとCHECKの部分に時間をさけるようになっていきたい。その時間を捻出するため、昨年度は1年間かけてサイトのリニューアルも実施し、サイト運用の効率化を図りました。
安西 ANAさんは、デジタルでやりたいこと、目指すことが明確ですよね。
冨満 「何のために、何をしたいのか」という意思がなければ、デジタルテクノロジーは使いこなせない。チーム内でも正解かどうかはわからなくても、常に自分なりの強い思いとともに、仮説にトライする姿勢を持ってほしいと話をしています。
安西 「Adobe Analytics」を長年ご利用いただいているANAさんですが、2015年4月より、「Adobe Marketing Cloud」の他のソリューションも本格的に導入いただき、そこから私たちコンサルティングチームとのお付き合いも本格化していますが、現場の担当の皆さんがそれぞれに自分なりの検証してみたい仮説をお持ちだと感じます。
自分たちの知識を高めより高次元な関係へ
西村 各担当者が自分なりの仮説を持っているのはよいことですが、一方で、それぞれの仕事の中でツールを導入してしまうと、結果的にソリューションがパッチワーク化し、チームとして目指すデジタルマーケティングは実現しない。
「Adobe Marketing Cloud」を選んだのは、アナリティクス、テスト、パーソナライゼーションやソーシャルなど、私たちがやりたいことすべてに対応したソリューションが内包し連携されていること。また「Adobe Marketing Cloud」のソリューション戦略の全体像が、私たちが理想として描いているデジタルマーケティングの姿と合致していたためです。
安西 アドビに対して、今後期待されることとは何でしょうか。
冨満 アドビさんとお仕事をするにあたって、我々の方も意識を変えていかなければならないと思っています。私たちの側から「そのソリューションで何ができますか?」という質問をすべきではない。どのような目的で、何をしたいのか、意思を明確に持った上でアドビのコンサルタントとお付き合いしたいし、より高い次元での会話ができる関係になりたいと思っています。
安西 組織の中でデジタルシフトの様な大きな変化を起こすには、経営層や上層部の理解とサポートが必須だと思います。ANAさんのデジタルシフトには経営層、上層部の方たちはどのような関わり方をしていますか。
冨満 直属の上司であるマーケットコミュニケーション部の部長とは、常に話し合い、情報を共有し、私と一緒に戦ってくれているという状態にあります。部全体に責任を持つ者がデジタルマーケティングの実践にコミットし、社内への訴求に力を注いでくれることは心強いです。
また経営層に至っても、デジタルシフトという変革を起こすことの重要性を理解し、我々の活動を支持してくれています。だからこそ、早く成果を出したいと考えています。
今回、導入した「Adobe Marketing Cloud」を使いこなして、どんどん成果を積み重ねていきたいと考えています。
安西 なるほど、ANAさんではデジタル時代に必要な戦略と活動を実践する現場、それを理解し支援する経営層が一丸となって、組織の変革を実現しているのですね。当社も引き続きANAさんのデジタルシフトをサポートさせていただければと思います。ありがとうございました。
お問い合せ
アドビ システムズ 株式会社
https://www.adobe.com/jp/marketing-cloud.html