書店B&Bの経営は「毎日がマーケティング道場」である(ゲスト:嶋浩一郎さん)【後編】

本屋B&Bでは書店員がビールを注いでくれる

中村:書原さんや幸福書房さんをリコメンしていた嶋さんは、実は下北沢にB&Bという書店を経営していらっしゃいます。

権八:B&Bは何の略ですか?

嶋:「ブックス&ビアー」ですね。本とビールで。自分の人生の中で大事なもの2つを全部出しちゃったみたいな。もうあと出すものありませんくらいの感じですね。

澤本:書店でビールを飲めるんですか?

嶋:飲めます。大学生の頃に、青山ブックセンターの六本木店とか、憧れませんでしたか? 僕は憧れでした。当時の青山ブックセンター六本木店は朝4時まで毎日やっていて、いかにも業界人っぽい人が大人買いしているんですよね。デザイン書なんかを。

「この人、1万円以上の本を5冊も買ってる。すげー!」と思うわけです。僕もいつか大人になったら青山ブックセンターで大人買いしようと思って、だから六本木で飲むと夜中の青山ブックセンターに行って、学生のときは買えなかった金額の本を買っちゃうんですよね。だから、ビールを飲ませれば本が売れるだろうという作戦なんです。

一同:

澤本:青山ブックセンター作戦だ。

嶋:そうです。なので、ビールと本を一緒に売っているんですよ。

権八:ビールはどういう風に売ってるんですか?

嶋:レジで「ビールください」というと、そこにビールサーバーがあって。ちゃんと書店員がビールサーバーの手入れもしてます。注ぎ方も研究したので、おいしく飲めますよ。下北沢の南口のマクドナルドの裏のビルの、30坪ぐらいのお店です。だいたい私鉄沿線の駅前にあるような小さな本屋さんと同じくらいです。駅前の普段の生活動線の中にあるような本屋をやってみたかったんですよ。ビジネスパートナーとして内沼晋太郎くんというブックコーディネーターと一緒に開業しました。

権八:NUMABOOKSの。

嶋:そうです。5年ぐらい前に2人で雑誌『ブルータス』の本屋特集のゲストエディターとして取材に参加させてもらったことがあって。そのときに全国の本屋を2人でまわったんですよ。僕は京都の恵文社、彼は鳥取の定有堂へ行って。定有堂は鳥取駅前の北口にあるんですけど、すごい本屋さんなのでぜひ行ってください。

権八:なかなか行く機会が・・・(笑)。

嶋:定有堂は本棚の木のところに小さいテプラみたいなものが貼ってあって、「女心」とか、「80年代」とか、ちょっと不思議なテーマが貼ってあるんですよ。でも、その上にある本がテーマに合っているかというと、違ったりする(笑)。そこも不思議でいいんです。

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