女性役員の謝罪記者会見の心得とは〜『リスクの神様』監修者が語る、ドラマの見所と危機管理・広報(1)

第1話の見所・キーポイント(2)危機対策収束の王道パターン

次に、危機対策を実施する側の認識上の大切な点は、危機を知った時点ですでに危機は拡散状態にあり損害・損失をゼロにできないことであることと、一刻も早く手段を講じないとさらに危機は企業の存続をも危ぶむ非常事態に発展するということへの十分な理解である。

この理解が希薄であると、一時的に沈静化した危機的事態に安堵して、原因究明を怠ったり、調査を中断してしまったりすることで、裏にあるもっと深い闇や犯罪、偽装といった事実に目をつぶることになりかねない。

真実を知ろうとする強い意思があったからこそ、『リスクの神様』においても、危機対策室のメンバーは、隠蔽されていたテスト中の製品事故にたどり着くことができたのだろうし、自ら公表するという先手を打つことで、結果的に事態の鎮圧に成功している。

そして最も重要な対策は、必ず収束宣言を行うことにほかならない。当たり前のように思えるが、不祥事の事実報道はよく行われるが、原因究明などが明示されず、責任の所在も明確にならないまま、なんとなく収束している事件が多く見受けられる。

『リスクの神様』では、事実確認→原因究明→是正措置→責任表明→担当役員辞任の流れで危機対策を収束させている。この王道が守られている事例は実は意外と少ない(図1:適正な危機管理の流れを参照)。

図1:適正な危機管理の流れ

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(C)フジテレビ

危機管理・広報の鉄則とは、ステークホルダーの関心事に先手を打って答え、かれらの要望に応える(「真摯に対応してもらえた」と認識させる)ことにある。決してステークホルダーが満足する答えを準備することではない。当たり前のことだが、ステークホルダーが満足する答えを常に準備することはできないから、やろうと思えば無理が生じ、結果として嘘をついたり、誤った発言をしたりすることによって新たな危機に転じる可能性がある。

正確かつ真摯な情報提供と相手に伝えようとする誠実な意思が伝えられれば、謝罪記者会見は概ね成功する。

最後に少しだけ「神狩かおり」の謝罪記者会見での注意事項について種明かしをしておくので参考になれば幸いである。

女性役員の謝罪記者会見の心得

  • 衣装はダーク系のスーツ、下のシャツは白、靴の色はスーツに合わせる
  • 派手な宝石類・アクセサリーの着用はNG
  • 髪の毛はばらつかせない
  • 足下は見えないように白い布で隠す
  • 机上のネームプレートで役職名等を開示
  • 化粧はできるだけ控えめに
  • 歩幅は通常よりも小さめに
  • 謝罪のおじぎは60度くらい、手は体の前で、少し長めに
  • 座った後はあまり体を動かさず、手を机の下に置き背筋を伸ばして
  • 言葉はゆっくりと前を見て話す
  • 回答に困ったらお客さま目線で考える
  • 言葉につまったら慌てず冷静に
  • 最後の謝罪のおじぎは最初よりも長めに
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白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

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