第2話の見所・キーポイント—会見でのボディランゲージ
前半の見所は、やはり豊川フーズ総務部長である麻生の記者会見だ。第1話の神狩かおり(戸田恵梨香)の記者会見と違い、満身創痍のボロボロ状態、完全に失敗事例の記者会見を描いた。
厳しい質問に冷や汗を重ね、足下の貧乏ゆすり、何度も握り直すボールペンなど、社会部記者から見れば、格好の餌食だ。「もう少しで墜ちるぞ!」と言わんばかりの麻生のボディランゲージに猛攻をかける記者たちに対して、麻生はなすすべなく、最後には怒りにまかせた発言を行い「灰色会見」と評価されてしまう。
こうしたボディランゲージは、嫌な質問に対する体の表現として認知されており、スポークスマンの焦りや緊張を表している。事件の背景に迫る質問などで動きが顕著になり、予めそのような行動をしないよう対策として説示していなければ、スポークスマンが自然に体現してしまうリスクとなる。
テレビのニュースで麻生の貧乏揺すりとペンを握りしめる手元のシーン、さらに「ないと言ってるだろうが!」と怒鳴る場面が衝撃的映像として繰り返し流される。完全な失敗事例である。
ドラマの後半では、金銭要求を行ういいがかり苦情者に対策室が対処する場面がある。現実の事件でも、残念ながらこのような苦情者は少なからず発生する。
苦情対応については、相手がいかなる外貌か(強面かどうか)に関係なく、また要求の強さ弱さに関係なく、初動としては分け隔てなく公平に対応することが原則である。
問題の起点となるのは、苦情者が要求する被害状況に見合った証拠書類の提出を行わず、明らかに過大な請求が行われ、「誠意を具体的な形にしろ」と暗に金銭要求をほのめかす状況に至る事例である。
豊川フーズに派遣された対策室の結城(森田剛)は、いわゆる事故被害を装う模倣犯に対する対処について総務部員に対して以下のように説明している。
「余計な敵を作らないように対応は丁寧に、しかし毅然とやること。検討します、考えておきます、権限がないので上司に相談しますみたいな受け答えはNGね。連絡義務が生じてクレーマーのペースに乗せられてしまう」
苦情対応に係る者は、自身が会社を代表して苦情処理にあたっているという自覚と責任を持つべきであり、「話を代わりに聞いておきます」のような無責任な考えを絶対に持たないことをこのシーンでは伝えている。
ドラマの最後の方では、リストラにからんだ従業員の悪意の異物混入の可能性が指摘され、また、5年前に異物混入事件をもみ消した隠蔽の事実について週刊誌にスクープ記事が掲載されるというシーンが展開される。
危機をチャンスに変える
豊川フーズはまさに瀕死の状態に追い込まれるが、その時点でも社長は謝罪記者会見に出ることを拒否し、「被害者の私がなぜ謝罪しなければならない?この記事にしたって私が就任する前の話じゃないか」と逃げ回る。
麻生総務部長は、この社長の判断に対して「自分が辞任すれば」と語るが、現実の事件でも、事実確認から原因究明の過程で、原因究明がしっかりと行われないまま経営責任を追求され、人身御供のように代役がいきなり責任辞任することがある。
西行寺はこのような辞任は決してあってはならないし、何の説明責任も果たさないと麻生にクールに伝えている。
ついに異物混入者と思われる者から異物の入った商品と脅迫内容が豊川フーズに届く。犯人が従業員である確信が持てる状況に発展するシーンだ。脅迫状は、天野社長の退任を要求し、その回答は特定新聞社の朝刊求人広告で行うことが指示されている。
危機対策室は、ここで指示された求人広告を使って犯人に対して別のメッセージを伝えるという行動をとる。筆者もかつて不特定の犯人に対して同様のメッセージを新聞紙上で行った経緯があり、犯人の次の行動を予測してメッセージを発信し相手の行動に先回りするという利点がある。
危機対策室は機転を使って豊川フーズ内の犯人を特定したが、この時点でも天野社長は謝罪記者会見を渋り、麻生部長でさえも会社の存続を危惧して判断を迷っている。
神狩かおりが、そうした麻生に対して「会社、利益、地位、社員、家族、商品、信頼、理念…全てを守ろうとしても何も守る事はできません」と語るシーンがある。何かを守るためには何かをあきらめることが危機管理には不可欠である。その守るべきものが会社の利益などではなく、消費者などのステークホルダー視点でとらえることが重要なのだ。
神狩かおりは続けて麻生に言う。「多くの人は大切なものに順番をつけるべきではないと考えます。でも、そういう訳にはいかないんです。…危機こそがチャンスなんです」この言葉は、『リスクの神様」全体につながる重要なキーワードである。
最後の場面で、麻生総務部長が謝罪記者会見を行う。すべての膿を出すかのように事実関係を正直に語る麻生。かつての麻生の記者会見と異なり記者たちにも真摯な態度が伝わる。企業の再生の序曲は、この「膿み出し」が不可欠である。
これまで不明確であった事件の背景や異物混入の原因究明、責任の所在、再発防止策などが淡々と麻生から発表される。
豊川フーズは最終的にサンライズ物産から切り離され他企業に買収されることになるが、結果としてその買収会社がサンライズグループの傘下に収まる可能性すら示唆され、しかも、その提案そのものが危機対策室長の西行寺からあったことも語られる。
「危機対策」とは、会社や従業員、その家族までも守るため、そこまで提案し、また実行する能力を求められるという点も通常の業務と異なる点である。次々と新たな危機的事態・場面が今後も展開されるが、危機対策室の動きを見逃さずにご覧いただきたい。