フードディフェンスの対処法とは
以下は、今回のテーマとなっているフードディフェンス(悪意の異物混入対策)に対する食品会社の基本的な考え方・対処方法を示すものである。
(1)汚染(異物混入)事故発生後の原因調査と対処方法
- 何らかの脅迫要求が伴う食品汚染(警察への速やかな届出)
- 犯行声明等のない食品汚染(偶然な汚染か悪意の汚染かが不明な場合を含む)
- 混入物質を特定し製造過程、保存過程、流通過程において混入する可能性を分析
- 販売後に混入が認められた場合は、包装材の外部からの破損・破壊の有無を確認
- 混入物質の毒性、危険性の分析・評価
- 混入物質の製造ラインの特定、担当者の特定、原材料レベルの混入可能性の評価
- 上記調査結果から偶然な汚染か悪意の汚染かを評価
(2)悪意の汚染の場合の分析(脅迫行為の動機分析)
- 社会的・政治的な抗議行動
- 従業員、元従業員による仕返し・報復行動
- 顧客、ライバル会社等による悪意の犯罪行為
- 国、会社、製品に対する経済的な抗議行動
- 愉快犯を含めた犯罪行為
- いいがかり要求を含めた金銭要求を目的とした犯罪行為
(3)考慮項目
- 汚染行為はシリアス(社にとって危機的事態を招く重大)なものか?
- 犯人は単一か、複数か?
- 犯行は、精神異常者、組織的犯行、テログループによるものか?
- 動機は最終的に金銭目的か、愉快犯か、悪戯か、報復行為か?
- 犯人の構成年齢は少年か、成人か?
- 異物混入は、市場での現場で発生しうるか?
- 包装強化を含めたセキュリティ対策を向上させるべきか?
- 一部もしくは全部の回収行為を実施すべきか?
- 警察への連絡を行うべきか?
- マスコミへの発表を行うべきか?
(4)脅迫アセスメント(脅迫のレベルを分析・評価)
- 脅迫行為はどのような形で行われ、どのように当社は認知したか?
- 最初の脅迫行為はいつあり、その後何度行われたか?
- 誰に向けた脅迫行為なのか?
- 脅迫行為の本質は何か?
- 脅迫行為はどのくらい具体的かつ計画的か?
- 脅迫者は誰なのか?
- 脅迫者は当社又は汚染した商品についてどのくらいの知識を有していると考えられるか?
- 類似の事件が最近国内で発生しているか?
- 脅迫者の精神状態はどのような状況と考えられるか?
- 脅迫者の犯罪実行能力はどの程度であると思われるか?
- 脅迫者は当社の特定の人物又は部署を指名してきたか?
- 脅迫者は当社の特別な事情に精通しているか?
- 以前に同一又は類似の脅迫を受けたことはあるか?
- 従業員又は一般の消費者に対する健康被害のおそれがあるか?
- 脅迫者の標的となる商品群は特定できるか?
- 当社だけを単独に標的とする犯行か?
(5)脅迫アセスメントから導かれる結論(3つの暫定的結論)
- 脅迫者は実際の行動を起こす能力もなければ起こすつもりもない
- 脅迫者は行動遂行能力はあるが実行するつもりはない
- 脅迫者は実行能力があり犯行を実行・継続するつもりである
(6)警察への届出(以下の場合に速やかに相談、届出、捜査依頼、告発を検討)
- 具体的な脅迫要求(金銭要求、商品販売停止など)があった場合は速やかに届出
- 悪意の汚染と認定した場合の警察への捜査依頼
- 被疑者不詳でも告発を検討する場合(「偽計業務妨害罪」、商品に対する「器物損壊罪」、「流通食品毒物混入防止法違反」、「傷害罪」などで告発)