日本を、逆成長させたい。

スポーツで逆成長する。

ゆるスポーツ事業を始めてから、早3カ月。
ぶっちゃけると、僕の給料は減りました。
始める前のそれと比べて、95%くらいです。
同時に勤務時間も減っています。
こちらも95%くらいでしょうか。
ただし、僕の生活満足度は、
明確に測定したわけではありませんが、
105%くらいになっています。
何故でしょうか。
理由は2つあります。

一つ目は、スポーツプレイヤーとしての
喜びを得ているためです。
ゆるスポーツという、
スポーツ弱者代表の自分が楽しめるスポーツを創るという
セルフコンシャスなビジネスを立ち上げたおかげで、
僕は今では月に2、3回はスポーツをするようになりました。
以前紹介させていただいた通り、
プレイヤーも多岐に渡っており、
プロアスリートから障害を持っている人まで様々です。
そんな雑多なみなさまと汗をかき、
敵味方関係なく広義の意味でひとつにチームとなり、
笑いあい、理解しあうことは、
生きがいにさえなっています。

二つ目は、スポーツクリエイターとしての
喜びも得ているからです。
先月、はじめてのハンドソープボール一般体験会を開催しました。
本当に人が来るかドキドキしていましたが、
定員の40名は無事に埋まり、10社ほどのメディアにも
来て頂くことができました。
参加者の中にはわざわざ青森から来た方や、
子供をベビーシッターに預けて来た方もいました。
普段運動していない人も4割くらいいました。
だけど、ほぼ全員がハンドソープボールを
心から楽しんでくれました。
笑いすぎて、翌日お腹が筋肉痛になったという
摩訶不思議現象が起きた方もいたそうです。
当日僕は審判を担当していた為、
汗だくでヘトヘトになっていたのですが(全然ゆるくない)
参加者の笑顔が本当にオアシスのように沁みました。
綺麗事抜きで、生きる力になりました。
今まで僕は色々なCMを作らせていただきました。
時には国民の7割以上にリーチするものもあり、
つまり8000万人以上の目に留まるものを
自分は作ってきたわけです。
この日の参加者はメディアやスタッフ含めると70人くらい。
CMでリーチするターゲットと比較すると、
スケールは全然違います。
だけど僕を昔からよく知る人から、
「本当に嬉しそうだね」
と当日言われました。
そうなんです。嬉しかったんです。
スポーツを創るという無茶な思想を掲げ、
ハンドソープボールという謎のスポーツを創り、
スポーツ権力者やスポーツ学の先生たちから
「邪道だ!」「神聖なスポーツを汚さないで下さい!」
と罵られながらも、
(今でも目をつりあげて私に抗議した40代女性の姿が忘れられません)
こうして目の前で笑ってくれる人たちがいる。
この幸せな状況は、
間違いなく自分が起点となって生まれている。
そんな独特の喜びに包まれました。

繰り返しになりますが、
ゆるスポーツを始めて給与が下がりました。
その分勤務時間も減り、
余った時間でスポーツをしたり創ったりしています。
結果的には、以前よりも充実した人生を送っています。

この状態を僕は勝手に、
「逆成長」
と呼んでいます。
英語でいうと”De-Growth(デグロース)”です。
経済的には退行しているけれども、
精神状態が以前よりも満たされている豊かな状態です。

人類の進化図を見ると、かならず人は右(前)を向いています。
でも僕はそろそろ、
人類は逆を向いていいんじゃないかと思っています。
進化図で、2015年を境に、
人類がクルッと左(後ろ)を向いてもいいのではと。
しかもその「回れ右」を、
オワカン(終わってるカントリー)であり、
20年以上も経済が破綻している超成熟国家である
日本が率先してやることに意味があると思います。
労働人口が減り、移民も今後劇的に受け入れない限り、
日本に経済的成長はきっと望めません。
そこで、窓際社員である僕から言わせて下さい。
もう、経済成長やめませんか(震え声)。
もちろん絵空事に聞こえるかと思います。
職種やビジネスステージにもよりけりの
限られた条件下での提案になるかもしれません。
だけど未だにみんなで前向いて「成長!」と言うのが
どうにも具合が悪いのです。

僕は逆成長の輪を、
ゆるスポーツを通じて広げたいと考えています。
オリンピックパラリンピックスポンサーも、
経済的なアクティベーションだけではなく
人間性や豊かさのアクティベーションのために、
選手や競技の力を使うと、
世界に新しいモデルを提示できるのではと感じています。
企業が率先して「逆成長」を目指し、
代わりに質の高い精神性を社員に提供できると、
逆に企業価値が上がったり、
ひょっとしたら巡り巡って売上が伸びることも
あるかもしれません。

次ページ 「思い出のクリエーション。」へ続く

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澤田 智洋(電通 コピーライター/プロデューサー)
澤田 智洋(電通 コピーライター/プロデューサー)

2004年電通入社。映画『ダークナイト・ライジングの』「伝説が、壮絶に、終わる。」等のコピーを手掛けながら、多岐に渡るビジネスをプロデュースしている。世界ゆるスポーツ協会代表。日本バブルサッカー協会理事長。スポリューションメンバー。義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」プロデューサー。視覚障がい者用のロボットを開発する「MAGIC STICK PROJECT」プロデューサー。日本ブラインドサッカー協会のコミュケーションプランナー。R25でマンガ「キメゾー」連載中。口説き文句研究家。著書「ダメ社員でもいいじゃない。」

澤田 智洋(電通 コピーライター/プロデューサー)

2004年電通入社。映画『ダークナイト・ライジングの』「伝説が、壮絶に、終わる。」等のコピーを手掛けながら、多岐に渡るビジネスをプロデュースしている。世界ゆるスポーツ協会代表。日本バブルサッカー協会理事長。スポリューションメンバー。義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」プロデューサー。視覚障がい者用のロボットを開発する「MAGIC STICK PROJECT」プロデューサー。日本ブラインドサッカー協会のコミュケーションプランナー。R25でマンガ「キメゾー」連載中。口説き文句研究家。著書「ダメ社員でもいいじゃない。」

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