主役はクリエイターから商店主へ。伊丹西台ポスター展の舞台裏 by 電通関西支社 日下慶太

会議は深夜2時まで 商店主の自助努力こそ重要

新世界、文の里でクオリティの高いポスターを作れるという確信はあった。今回はそのあたりはもう各制作者におまかせして、ぼくは商店主たちをどう活性化するかというところに注力をした。

商店主に厳しい注文をした。商店主たちはそれを乗り越えようと会議を重ねた。飲食店が多く、店が終わっての会議のため会議はいつも深夜2時にまで及んだ。

1)商店主プレゼン大会

制作者一同の前で商店主たちに5分間で自分の店について語ってもらった。訥々と話す居酒屋店主、パワーポイントを用意する弁当屋、かぶり物をするバーテンダー、双子の娘に挟まれながら語る写真店、みんな必死で自分の店をアピールした。

我々広告会社の人間と違って飲食店、小売店の店主は大人数の前で話す機会などほとんどない。それが新鮮でとてもよかった。

実はぼくが各店舗を取材してプレゼンシートを作っていたので正直、ポスターを作る上でこれは必要なかったのだ。しかし、まず商店主たちに自分の店のことをまとめさせる上でとても有意義だった。

また、このプレゼン大会の場に伊丹市立図書館のホールを借りることができたのも大きい。市としてのイベントになったのだ。行政のバックアップがあってこそであった。

2)おもしろいサービスとおとくなサービス

期間中はスタンプラリーを実施した。というのも商店街と違ってエリアでのポスター展なのでどうやってまわってもらえばいいかということを工夫したのである。スタンプは特製の商店主の似顔絵スタンプを作成。スタンプラリーをコンプリートするとポスター全集がもらえるという取り組みにした。

また期間中、マップを各店舗に持参すると、「おもしろいサービス」か「お得なサービス」のどちらかが受けられるというようにした。

例えば、眼鏡屋の「おもしろいサービス」は目が大きくなるレンズで記念撮影。「お得なサービス」は1万円以上お買い上げでくもり止め無料サービス。理容店は子どものモヒカンカット1000円/頭皮用石鹸半額。花屋は花占い/1000円以上お買い上げの方に花一輪無料贈呈。貴金属店は1000万円相当の貴金属をつけて記念撮影/ピアス割引と各店舗が工夫をした。

それぞれが自分の頭をひねって考えてもらうことを大切にしたのでそれぞれの店のアイデアには一切口を挟んでいない。

3)西台復活祭

2015年1月17日はちょうど阪神大震災から20年目だった。この日、彼らは「西台復活祭」を開催した。30メートル四方の小さな児童公園に、店やミニSLを出し、ポスターの投票所を設け、ゆるキャラを呼び、次のポスター展開催地である女川から人を呼んだりと、彼らが自主的にイベントをしたのだ。

イベント自体、決して派手なものではなかったが、彼らは来年もやる予定である。もうポスター展や電通がなくとも、彼らは来年にイベントをするのだ。そう、今回は店主たちの動きがすばらしかった。だから、こちらとしてもある程度の方向付けをすれば全速力で走ってくれるので本当にありがたかった。

次ページ 「広報戦略は「制作者ではなく、商店主を主人公に」」へ続く

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