広報戦略は「制作者ではなく、商店主を主人公に」
最後にPRについて。実は、PRについては不安であった。ポスター展も3回目、しかも、文の里であれだけ騒がれた後とあってメディアはもう取り上げてくれないのではないか、という不安がつきまとった。
ポスター展はこのイベントを告知する費用がない。メディアに取り上げてもらわなくては意味がない。なので、どうしても文の里とは違う何かが必要だった。
それがひとつは阪神大震災から20年という物語であった。震災から20年、確かに伊丹はそこから衰退した。だが、今はもう震災の傷跡もない、果たしてニュース性としてどうなのか不安ではあったが。それはきちんとストーリになりニュースに組み込まれた。
もう1点は何度も述べてあるが商店主の自主性である。今までの報道のされ方は制作者が主人公であった。今回はそれを商店主にしようと考えたのだ。これは確かに功を奏した。ぼく含め、制作者があまりに出てこなくてちょっと哀しかったけれど、それはそれでよかった。
商店街の中華食堂は売上が2倍になった
以上のこともあって、商店主たちは努力をし、ポスター展に来た客を見事に取り込めたように思える。ポスターもお店も楽しめるポスター展。
伊丹市民にはじまり、淡路島、愛知から日帰り、果ては沖縄から北海道までたくさんの人がやってきた。例えば中華料理店の開華亭は売上が1.5〜2倍。そう、ポスターは売上にも結びついたのである。
総選挙では6527票が集まった。結果はメディア28社が取材し、35回報道。メディア露出は7億8000万円。文の里の約2倍だ。全国ネットや東京キー局での放送、さらには週刊プレイボーイなどよりメジャーなメディアに取り上げられたのが大きかった。
いちばんの収穫は商店主たちが力を得たことだ。度重なる深夜の会議や、イベントの企画実行で商店主がひとつとなった。会釈するだけの仲が戦友のようになった。ポスター展の成功が彼らに大きな自信をつけた。今後、彼らは自分たちの力だけで西台をより良い町にしていくことだろう。それが何よりうれしい。
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