第3話の見所・キーポイント——何かを守るには何かを捨てる覚悟がいる
西行寺は、究極の選択として、2つの事件の影響度を比較した場合、CMに抜擢したトップアイドル北条ちなみのタレント生命が終わり、サンライズ物産の企業広告もお蔵入りしたとしても、サンライズ物産と代議士との不適切な関係が発覚した場合の影響を考慮すれば、北条ちなみを犠牲にしてでも代議士の危機を守り抜く決意を早い段階から固めていた。
脅迫してきた記者に口止め料を払い、北条ちなみを一度は守ったかに見えた西行寺だが、代議士に対する説得、代議士の記者会見を見計らっての時間かせぎ、さらには絶妙なタイミングでの北条ちなみに関するマスコミへの情報リークは、すべて最高の演出を行うための西行寺の戦略(ミッション)の一部だった。彼には最初の段階から脅迫した記者を黙らせても、いずれ他の記者によって事実関係は発覚し、タイミングを逸すれば北条ちなみは捨て石の価値すらなくなることを予測していたはずだ。ここでも西行寺は「危機をチャンス」に転じることに成功した。
危機対策はいわば将棋の盤面に似ている。その瞬間瞬間は打てる一手に限りがあるが、何十手も先の展開を見通す場合、相手の出方で盤面の変化は多様となり、打つ手の数は想像を超える。西行寺は起こりえるあらゆる現象を予測し、最善の対策を講じるために、最高のオペレーションの実施時期を密かに図っていた。
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。