ここでは、『販促会議』2015年7月号に掲載された連載「販促NOW-アプリ編」の全文を転載します。
2015年4月24日に発売となったアップルのウェアラブル端末「Apple Watch」。これまで低空飛行を続けていたウェアラブル市場ではあるが、アップルが本気で取り組みを始めたことで、一気に盛り上がりを見せている。
これまでiPhone向けアプリを提供していた企業は、「バージョンアップ」させることで、アプリをApple Watch対応にすることができる。
そんな中、いち早く既存のアプリをApple Watch対応させて注目を浴びたのがJAL(日本航空)だ。Apple Watch発売日となる4月24日にはすでにアプリのバージョンアップを終えており、ユーザーがApple Watchを購入したらすぐに使えるようになっていた。
JALのアプリ「JAL Countdown」は、予めJALマイレージバンクの会員番号とパスワードを登録しておくと、予約している飛行機のさまざまな情報がApple Watchに表示されるというものだ。
例えば、予約している便について「出発準備中」「優先搭乗中」「搭乗案内中」といった状況をリアルタイムに教えてくれたり、出発10分前まで残り時間をカウントダウンするという。搭乗直前まで買い物や食事をしていてもApple Watchであれば、手元を見ればすぐに確認できるだけに利便性は高そうだ。
アプリではそのままチケットの2次元バーコードも表示するため、保安検査場や搭乗口を通過できるチケットレスサービス「JALタッチ&ゴー」もできる。つまり、Apple Watchをゲートにかざすだけで飛行機に乗れてしまうというわけだ。
JALではApple Watch対応を進める上で、是が非でもApple Watch発売日に合わせて提供するために、相当、苦労をしたようだ。アップルと協力関係にあるようだが、Apple Watchの実物は発売日前には当然のことながら手に入らない。そのため、2次元バーコードを原寸大で印刷し、腕時計に貼って、ゲートを通過できるかのテストを繰り返したという。
実際にApple Watchで使えるかは、発売日に買って試してみないことには分からない。そこで、アプリ担当社員が必死になってApple Watchの予約に挑み、何とか2本を発売日にゲット。それから実機で試験をして、全く問題なく使えることが確認できたという。
ただ、それだけ苦労したことで、Apple Watch発売日にサービス開始と言うこともあり、多くのメディアに取材され、JAL の顧客にもそのニュースが届いたのだった。
Apple Watchという新しいプラットフォームにいち早く対応して、メディアの注目を集めるというのも、アプリによるプロモーション手法のひとつと言えそうだ。
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石川 温氏(いしかわ・つつむ)
ケータイ・スマートフォンジャーナリスト。1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
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