【前回のコラム】「応援部を続けたいから、電通に入った。」はこちら
応援部の「学生注目!」は広告コピーだと思う。
前回のコラムをご覧になってくださった皆様、本当にありがとうございました。早慶戦のポスターをつくり、「応援部を続けたいから、電通に入った。」というコラムを書き、ご覧の通り、私は応援部でできています。
そんな私の2回目のコラム。
新入社員のときに日本広告業協会懸賞論文に応募しました。「応援部の『学生注目!』を広告活動へ。〜視点をずらす戦略の可能性〜」というタイトルの論文で、ファイナリストに選出していただきました。今回は、そこで書いた内容を紹介したいと思います。
応援部と聞いて、イメージするものはなんでしょうか。
黒い学生服を着て、必死に叫んでいる姿。
精神論で追い込み、理不尽で厳しい上級生に服従する下級生の姿。
応援部と聞くと、なぜかネガティブな印象を持たれます。
わたしが見てきた応援部は、そんな世界ではありませんでした。「広告業界に通じる、応援部の考え方」があると私は当事者としてお伝えしたいです。
「学生注目!」
「なんだー!」
こんな掛け合いを観客席で聞いたことはないでしょうか。これは応援部がよく行う、学生注目という応援手法です。グラウンドやフィールドで戦う選手たちへの観客の声援を最大化させるため、応援部は「学生注目」を使って観客たちに語りかけます。
応援部が「学生注目」と言うと、観客は「なんだ」と返し、そこにまた応援部が「◯◯である」と返すと、観客もそろって「そうだー!」とか「いいえー!」などとこたえ、応援を盛り上げていきます。
ただ「声を出してください!」「盛り上がりましょう!」と伝えても、熱狂的なファン以外は、声を出してくれません。そんな観客に、なんと声をかければいいか。「一緒に声をだしましょう!」と直球で勝負するときもあれば、「選手にとって今日の試合はこんな大事な場面なのです!」とストーリーをもたせて共感を呼ぶこともあります。
「実は1点差というのは、うちの勝ちパターンなのです。」
と気づきを与えたりと、応援部員は常に頭を全回転させて応援をリードしています。
学生注目で発する言葉選びは慎重に行います。なぜなら、観客の求めていないことを言うと目の前でしらけたり、野次を飛ばされ、応援が盛り下がるからです。反応は非常にシビアですが、逆にうまくテーマを見つけて心をつかめば、声援は2倍にも3倍にも大きくなります。
しかし、盛り上がるテーマを見つけても油断はできません。その反応は試合状況においても常に変わり続けるからです。